山田準『洗心洞箚記』(本文)41 Я[大塩の乱 資料館]Я
2009.5.29

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『洗心洞箚記』 (本文)

その41

山田 準訳註

岩波書店 1940 より



◇禁転載◇

上 巻訳者註

     五四 或曰く、経に於て明らかに虚を言ふこと、有り                      やと。曰く、有り。大学に曰く、其の心休休として、                 それ容るる有るが如し。人の技ある、己れこれ有る       げんせい             如く。人の彦聖なる、其の心之を好みす、啻に其の                   まこと  口より出だすが如くなるのみならず、寔によく之を    容ると。此の両個の容の字は、心の量なり。心の量                      は太虚にあらずして何ぞ。中庸に曰く、大を語れば                     こと  天下よく載するなしと。又た曰く、上天の載は、声  なく臭なし、至れりと。其の大や、至や、これ太虚                  にあらずして何ぞ。孔子曰く、君子器ならずと。又                         た曰く、吾が道一以て之を貫くと。子四を絶つ、意   な    ひつな    こ な     が な         毋し、必毋し、固毋し、我毋しと。子曰く、我れ知               るあらんか、知るなし。鄙夫あり我れに問ふ、空空  如たり、我れ其の両端を叩いて竭すと。又た曰く、      ちか    しば\/           回やそれ庶いか、屡 空しと。又た曰く、天何をか言  はんや、四時行はれ百物生ず、天何をか言はんやと。  其の器ならざるや、一や、四を絶つや、空空や、屡  空しきや、天何をか言はんや、これ皆太虚にあらず              して何ぞ。孟子曰く、我れ善く吾が浩然の気を養ふ  と、其の浩然なるものは、太虚にあらずして何ぞ。  而て易・書・詩・礼・春夏亦た其の至るに及んでは、  則ち皆太虚の徳に外ならなるざりなり。易に曰く、             は            したが  この  太極、書に曰く、偏無く陂なく、王の義に遵へ。好                 にく  みを作す有るなく、王の道に遵へ。悪みを作す有る               たう     たう\/  なく、王の路に遵へ。偏無く党無く、王道蕩蕩たり。           へい\/   はん   そく  党無く偏無く、王道平平たり。反無く側無く、王道         正直。其の有極に会し、其の有極に帰すと。詩に亦         こと  せい   しう           た曰く、上天の載、声無く臭無しと。礼に曰く、無                    声の楽、無体の礼と。春秋に曰く、春王の元年と。  其の太極や、有極や、声臭なきや、声体なきや、元  や、此れ皆亦た太虚にあらずして何ぞ。これ凡そ挙  ぐる所、経の明徴なり。子猶之を疑ふや。鳴呼太虚   めう げんじゆつ  のは言述すべからざるものなり。然り而て理気合  一をさとれば、則ち太虚も亦た惟だ理気のみ。もし  理気を離れて太虚を言はば、四書五経聖人の道にあ  らざるなり。学者宜しく之を知るべし。   或曰、於経明言虚、有乎、曰、有、大学曰、其   心休休焉、其如容焉、人之有按、若己有之、   人之彦聖、其心好之、不啻若其口、寔能   容之、此両箇容字、心之量也、心之量、非太虚   而何、中庸曰、語大天下莫能載焉、又曰、上天   之載、無声無臭至矣、其大也、至也、此非太虚   而何、孔子曰、君子不器、又曰、吾道一以貫之、   子絶四、母意、母必、母固、母我、子曰、我   有知乎哉、無知也、有鄙夫於我、空空如也、   我叩其両端而竭焉、又曰、回乎其庶乎屡空、又   曰、天何言哉、四時行焉、百物生焉、天何言哉、   其不器也、一也、絶四也、空空也、屡空也、天   何言也、此皆非太虚而何、孟子曰、我善養吾浩   然之気、其浩然也者、非太虚而何、而易書詩礼   春秋亦及其至也、則皆不於太虚之徳也、易   曰、太極、書曰、無偏無陂、遵王之義、無   作好、遵王之道、無悪、遵王之路、無   偏無党、王道蕩蕩、無党無偏、王道平平、無反   無側、王道正直、会其有極、帰其有極、詩亦   曰、上天之載、無声無臭、礼曰、無声之楽、無   礼之礼、春秋曰、春王元年、其太極也、有極也、   無声臭也、無声礼也、元也、此皆亦非太虚而   何、此凡所挙、経之明徴也、子猶疑之乎、鳴呼、   太虚之、不言述者也、然而了理気合一、   則太虚亦惟理気焉耳、如離理気、而言太虚者、   非四書五経聖人之道也、学者宜之、




休々。寛容の
貌。

彦聖。善土の
称。

啻に云々。口
で褒める以上。

大を云々。載
せる物が無い程
大きい、中庸の
第十二章に見ゆ。

上天云々。載
は事なり、詩経
大雅文王篇に見
ゆ。

論語、為政篇。

里仁篇。

子罕篇。

同上。

先進篇。

先進篇。

孟子公孫丑上
篇。



繋辞篇。







洪範篇 偏も
陂もかたよる。




反側。かたむ
く。

有極。道の奥
極。

無声云々。礼
記、孔子間居篇。

春王。春秋巻
首。


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