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六三 先天は理のみ、而て気其の中に在り。後天は気
のみ、而て理其の中に在り。要するに理と気とは一
えき
にして二、二にして一なるものなり。実に易を知る
たれ
者にあらずんば、孰かよく之を見んや。
先天者理焉耳、而気在 其中 矣、後天者気焉耳、
而理在 其中 矣、要理与 気一而二、二而一者也、
非 実知 易者 、孰能見 之也哉、
●けん すく
六四 聖賢の権を行ふや、仁義忠信の窮るを済ふ。而
て仁義忠信之を待つて以て世に行はば、則ち上下治
まる。奸悪の権を行ふや、己を利し人を害ふの私を
為す、而て己を利し人を害ふこと、之に因つて以て
やぶ
世に施さば、則ち風俗壊る。それ権は一なり、而て
● もう
善悪の相隔たる乃ちかくの如し。周公・王莽の事に
於て見るべし。慎まざるべけんや。
聖賢之行 権也、済 仁義忠信之窮 、而仁義忠信、
待 之以行 于世 、則上下治矣、奸悪之行 権也、
為 利 己害 人之私 也、而利 己害 人、因 之以施
于世 、則風俗壊矣、夫権一、而善悪之相隔乃如
此、於 周公王莽之事 、可 見矣、可 不 慎哉、
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●先天。易の文
言に「天に先つ
て天違はず、天
に後れて天時を
奉ず」とあり、
先天は本体、後
天は現象といふ
如し。
●行権。孟子に
「経に反して道
に合するを権と
曰ふ」とあり、
応変の計。
●周公王莽。周
の名宰相周公旦
は、摂政として
太平を興す、前
漢末の外戚王莽
は摂政として王
位を奪ふ。
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