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六六 朱子の書を読むは固より論なし。陽明王子以前
の朱学諸子の書は、猶宜しく之を読むべきなり、其
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体用の支離と、知行合一せざるとの如きは、即ち掌
●こらん
を指す如し、嘗て胡乱せず、過を掩はざる者に庶き
なり。陽明王子以後の朱学諸子の書は、則ち初学之
を読まざるも可なり。何となれば則ち大抵客気勝心
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あるものにして、王を抑へて朱を揚げんと欲す、故
●かろうほてつ
に漏補綴し、支離なくして合一を為す如し。然れ
ども良知を以て仇と為し、之を度外に舎く、則ち要
のこ
するに本体を遺して言語に流る、焉んぞ過を掩ふを
免るるを得んや。過を掩ふは小人の情状にして、良
す ●ぎしう
知を舎つるは義襲の粗工なり。初学之を読まば、則
めいびゆう
ち必ず迷繆せん。終に身心の修正を得る能はざるな
り。故に曰く、之を読まざるも可なりと。而て学問
な
精熟に至らば、則ち之を読むも亦た奚んぞ害せんや。
● らん
主宰あらば、則ち一覧して其の是非得失、心目の間
れう あ
に瞭然たらん。これ朱を抑へて王を揚ぐるの私にあ
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らず。後輩得るなくして俗学に陥らんことを患ふ、
つ
故に之に詔ぐるなり。
読朱子書固無論矣、陽明王子以前、朱学諸子之
書、猶宜読之也、如其体用之支離、知行不合
一、即如指掌、嘗不胡乱、庶乎不掩過者
也、陽明王子以後、朱学諸子之書、則初学不読
之可也、何則大抵有客気勝心者、欲抑王而揚
朱、故漏補綴、如無支離而為合一、然以
良知為仇、舎之於度外、則要遺本体而流言
語、焉得免掩過也哉、掩過小人之情状、舎
良知義襲之粗工、初学読之、則必迷繆矣、終不
能得身心之修正也、故曰不読之可也、而至
学問精熟、則読之亦奚害哉、有主宰、則一覧
而其是非得失、瞭然乎心目間矣、不是抑朱而
揚王之私、患後輩無得而陥俗学、故詔之也、
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●論なし。言ふ
までも無い。
●体と用とが二
つに分れること。
●掌を指す。明
瞭なること。
●胡乱。紛れ疑
はしきこと。
●王。王陽明。
●朱。朱熹。
●缺点をつゞく
ること。
●義襲。孟子養
気章の語、義も
て襲ひ取る即ち
本心に本づかぬ
形式的な所行。
●主宰。良知。
●俗学。本心に
本づかぬ学問。
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