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七二 実に不義を知る、然る後其の富貴は浮雲の如き
しか いづく
を知るなり。否らざれば則ち安んぞ之を知るを得ん。
而て是の知は便ち良知にして、而て聞見の知にあら
ざるなり。然るに学者聞見の知を推広し、其の浮雲
たと
の如きこと、聖人と一般ならんことを欲す。譬へば
●べう ●けん
眇にして千里の外を見、蹇にして高山の頂に登る如
し、其れ亦た難いかな。
実知不義、然後知其富貴如浮雲也、否則安得
知之哉、而是知便良知、而非聞見之知也、然学
者推広聞見之知、欲其如浮雲与聖人一般、
譬如眇而見千里外、蹇而登高山頂、其亦難矣
哉、
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●論語述而篇に
「不義にして富
み且つ貴きは、
我に於て浮雲の
如し」とあり。
●眇。すがめ。
●蹇。足なへ、
びつこ。
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