山田準『洗心洞箚記』(本文)57 Я[大塩の乱 資料館]Я
2009.7.5

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『洗心洞箚記』 (本文)

その57

山田 準訳註

岩波書店 1940 より



◇禁転載◇

上 巻訳者註

   おうやう   りうきふじ            れん 七四 欧陽公、劉給事を祭る文に曰く、「金は百錬以   かゞみ  て鑑と為る、而て万物其の形を遁るる能はず。物の     しよく                為めに蝕されて其の光を蔽ふに及びては、頑然とし    へき  て瓦甓と異なるなし。然り而て一たび良工の薬磨に       みが        かんたん  遇うて之を瑩かば、則ち肝胆を見て毛髪を数ふべし。  葢し其の昏ますべきものは光なり。昏ますべからざ  るものは性なり。其の或は廃せられ、而て或は用ひ  らる、幸と不幸とあるに由る」と。欧陽公性を語る               れい  い  を欲せず、而て此の数語性の霊を道ひ尽す。学者よ  く之を観れば、則ち良知の旨此を出でず。而て性を                たうしゆ  語れば則ち人必ず以て天自然に陶鑄を為すとなす、     れん  而て百錬以て鑑と為るより甚しきを知らざるなり。    記に曰く、人は、それ天地の徳、陰陽の交、鬼神の                    会、五行の秀気なりと。其の初め性に命ずるや乃ち                       此の如し。豈亦た容易ならんや。故に人は大和を保                    しか  合するの工を尽さざるべからざるなり。否らざれば         こ ふ  則ち天地の恩に辜負せん。   欧陽公祭劉給事文曰、「金百錬以為鑑、而万物   不其形、及物蝕而蔽其光、頑然無   異乎瓦甓、然而一遇良工之薬磨而瑩之、則可   見肝胆而数毛髪、葢其可昏者光、不昏者   性、其或廃而或用、由幸与不幸、」欧陽公   不性、而此数語道尽性之霊、学者善観   之、則良知之旨不乎此、而語性則人必以為   天自然為陶鑄、而不乎百錬以為鑑也、   記曰、人者、其天地之徳、陰陽之交、鬼神之会、   五行之秀気也、其初命性也乃如此、豈亦容易哉、   故人不合大和之工也、否則辜負乎   天地之恩矣、


欧陽公。宋の
名臣欧陽脩、唐
宋八家の一、劉
給事を祭る文、
欧陽文忠公全集
に出づ。

頑然。かたく
なること。霊な
き貌。











陶鑄。天が自
然に造る。

記。礼記礼運
篇。

五行。木火土
金水。

命。賦与の意。

大和。天地陰
陽の徳。

辜負。そむき.
不義理をする。


『洗心洞箚記』(本文)目次/その56/その58

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