●おうやう りうきふじ れん
七四 欧陽公、劉給事を祭る文に曰く、「金は百錬以
かゞみ
て鑑と為る、而て万物其の形を遁るる能はず。物の
しよく ●
為めに蝕されて其の光を蔽ふに及びては、頑然とし
へき
て瓦甓と異なるなし。然り而て一たび良工の薬磨に
みが かんたん
遇うて之を瑩かば、則ち肝胆を見て毛髪を数ふべし。
葢し其の昏ますべきものは光なり。昏ますべからざ
るものは性なり。其の或は廃せられ、而て或は用ひ
らる、幸と不幸とあるに由る」と。欧陽公性を語る
れい い
を欲せず、而て此の数語性の霊を道ひ尽す。学者よ
く之を観れば、則ち良知の旨此を出でず。而て性を
●たうしゆ
語れば則ち人必ず以て天自然に陶鑄を為すとなす、
れん
而て百錬以て鑑と為るより甚しきを知らざるなり。
●き
記に曰く、人は、それ天地の徳、陰陽の交、鬼神の
● ●
会、五行の秀気なりと。其の初め性に命ずるや乃ち
●
此の如し。豈亦た容易ならんや。故に人は大和を保
しか
合するの工を尽さざるべからざるなり。否らざれば
●こ ふ
則ち天地の恩に辜負せん。
欧陽公祭劉給事文曰、「金百錬以為鑑、而万物
不能遁其形、及為物蝕而蔽其光、頑然無
異乎瓦甓、然而一遇良工之薬磨而瑩之、則可
見肝胆而数毛髪、葢其可昏者光、不可昏者
性、其或廃而或用、由有幸与不幸、」欧陽公
不欲語性、而此数語道尽性之霊、学者善観
之、則良知之旨不出乎此、而語性則人必以為
天自然為陶鑄、而不知甚乎百錬以為鑑也、
記曰、人者、其天地之徳、陰陽之交、鬼神之会、
五行之秀気也、其初命性也乃如此、豈亦容易哉、
故人不可不尽保合大和之工也、否則辜負乎
天地之恩矣、
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●欧陽公。宋の
名臣欧陽脩、唐
宋八家の一、劉
給事を祭る文、
欧陽文忠公全集
に出づ。
●頑然。かたく
なること。霊な
き貌。
●陶鑄。天が自
然に造る。
●記。礼記礼運
篇。
●五行。木火土
金水。
●命。賦与の意。
●大和。天地陰
陽の徳。
●辜負。そむき.
不義理をする。
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