● ●しんがう
七五 王文成公、宸濠を討するの独断、固より其の良
知を致すなり。然り而て其の、其の良知を致す所以
●さいきよさい ● かへ
は、乃ち蔡虚斎が、岳飛の師を班せしを論ぜし書よ
これ
り来る。因て知る言を立て以て諸を天下万世に垂る、
すこ おぎな
即ち亦た仁なり。鳴呼豈小しく之を補ふと曰はんや。
王文成公討宸濠之独断、固致其良知也、然而
其所以致其良知、乃従蔡虚斎論岳飛班師書
来、因知立言以垂諸天下万世、即亦仁也、鳴
呼、豈曰小補之哉、
●れきたく
七六 我れ常に一日を以て一年と為し、光陰を歴度す。
近ころ古人一日を以て百年と為し、百年を以て一日
かぎり
と為すの語を読むに因つて、道窮りなく、而て学際
なきを悟るなり。
我常以一日為一年、歴度光陰焉、因近読古
人以一日為百年、以百年為一日之語、悟
道無窮、而学無際也、
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●文成公。明の
王子名は守仁、
字は伯安、陽明
先生といふ、文
成は謚、陽明学
の首唱者なり。
●宸濠。明の王
族、南昌に拠つ
て叛す。
●蔡虚斎。名は
清、明代の朱子
学者、蔡文荘公
集あり。
●南宋の岳飛。
名将恨を呑んで
師を還す。
●歴度。月日を
順次に計算する
こと。
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