山田準『洗心洞箚記』(本文)59 Я[大塩の乱 資料館]Я
2009.7.7

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『洗心洞箚記』 (本文)

その59

山田 準訳註

岩波書店 1940 より



◇禁転載◇

上 巻訳者註

    人     し 七七 或問ふ、子一日を以て一年と為すの義如何と、  われ                  われ  予笑うて答へず。再三請ふ。因つて曰く、予他術あ               ねうし  るにあらざるなり。只だ日の子丑を以て実に仲冬季         とらうたつ  冬の時と為し、寅卯辰を以て実に孟春仲春季春の時      みうまひつじ  と為し、巳午未を以て実に孟夏仲夏季夏の時と為し、 さるとりいぬ                    申酉戌を以て実に孟秋仲秋季秋の時と為し、而て亥                  ご び  を以て実に初冬の時と為す。而て寤寐常に吾が性を                       しばらく  見る。仁義礼智の妙は天運と一箇にして、更に須臾   かんだん  の間断もあらざるなり。もし一も間断あらば、則ち  禽にして人にあらず、死にして生にあらず。是の故                       させつ  に良知を致して以て省察修治す、則ち起臥より瑣屑               そむ  の事に至るまで、仁義礼智に叛きて之を行ふ能はざ       くふう  るなり。工夫是に於てすれば、則ち一日を以て一年  と為すも猶未だし、百年と為すと雖も可なり。故に  一日の光陰を送る、豈亦た容易ならんや。予再三の                と ろ  請に因て、已むを得ず以て之を吐露するなり。冀く         きようだい  は吾が言を以て衿大とする勿れ。   或問、子以一日一年之義、如何、予笑而不   答、再三請、困曰、予非他術也、只日以子   丑実為仲冬季冬之時、以寅卯辰実為孟春仲   春季春之時、以巳午未実為孟夏仲夏季夏之時、   以申酉戌実為孟秋仲秋季秋之時、而以亥実   為初冬之時、而寤寐常見吾性、仁義礼智之妙、   与天運一箇、更不須臾之間断也、如一有   間断、則禽而非人、死而非生、是故致良知以   省察修治、則起臥至瑣屑之事、不仁義礼   智而行之也、工夫於是、則以一日一年猶   未矣、雖百年可也、故送一日之光陰、豈亦   容易也哉、予因再三之請、不已以吐露之   也、冀以吾言衿大矣、





子丑。夜半よ
り四時に至る。

寅卯辰。暁四
時より午前八時
に至る。

巳午未。午前
十時より午後二
時に至る。

申酉戌、午後
四時より八時に
至る。

亥。午後十時。



瑣屑。こまか
しき事。









衿大。衿は、
ほこる、大げさ
といふ如し。


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