い
七八 心を存するに二あり。聖賢より已下、心を理に
よく
存するは、固より無かるべからざるなり。心を欲に
存するは決して有るべからざるなり。然れども心を
欲に存するは即ち易くして、而て心を理に存するは
●
乃ち難し。古人の詩に云ふ所の、「呼び起す十年心
う
上の事。春風楼下花を売るの声」と、是れ亦た心を
ちか ●じこく
欲に存する者に庶し。故に学者省察の工夫、時刻も
廃すべからざるは、これを以てなり。
存心有二、自聖賢已下、存心於理、固不可
無也、存心於欲、決不可有也、然存心於欲即
易、而存心於理乃難矣、古人詩所云、「呼起十
年心上事、春風楼下売花声、」是亦庶乎存心於
欲者也、故学者省察之工夫、不可時刻廃、以
此也、
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●呼起云々。宋
人の句、花を売
る声を聞いて、
十年も前の快心
の事を憶ひ起す。
●時刻。一時一
刻。
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