●
八三 善無く悪無きは、心の体なり。故に君子知を致
たゞ
し物を格し、以て其の体に帰すれば、便ちこれ太虚
●くわん
にして、而て万事万物皆其の中に涵せらる。これを
●ゐいくさんさん と
以て日用応酬す、故に位育参賛の功徳を遂ぐるを得
るなり。
無 善無 悪、心之体也、故君子致 知格 物、以帰
乎其体 、便是太虚、而万事万物、皆涵 於其中 矣、
以 是日用応酬、故得 遂 位育参賛之功徳 也、
おのれ
八四 学は固より己の心を正しくし、己の身を修む。
然れども己の心を正くし、己の身を修むるのみを以
て、学の至りと為すは、蓋し大人の道にあらず。そ
●
れ身外の虚は皆吾が心なり。則ち人物は心中に在り。
●
其の善を為し、悪を去るは、亦た我が身の事にして、
きはま
而て其の善を為すも亦た窮りなし、悪を去るも亦た
たふ や
窮りなし。故に大人は斃れて後に休む。故に斃れざ
●
る内は、其れをして善をなし、其れをして悪を去ら
しむ。便ちこれ功夫なり。
学固正 己心 、修 己身 、然以 正 己心 修 己身
而已 、為 学之至 焉、蓋非 大人之道 矣、夫身外
之虚、皆吾心也、則人物在 心中 矣、其為 善去
悪、亦我身之事、而其為 善亦無 窮也、去 悪亦
無 窮也、故大人斃而後休矣、故不 斃内、令 其
為 善、其去 悪、便是功夫、
|
●王子四句数の
首句なり。
●涵。含み、取
入れること。
●中庸に「中和
を致して、天地
位し、万物育す」
とあり。
●人物は太虚な
る我が心中にあ
る。
●其の。人物を
承けていふ。
●其れ。また人
物を指す。
|