人
八六 或立志の義を問ふ。曰く、先づ志字を知つて而
ゆ
て可なりと。曰く、心の之くところ之を志と謂ふは、
ぜ
是なるかと。曰く、否、これ立志の志の義にあらざ
●したが したが
るなり。それ志字は士に从ひ、心に从ふ。是れに由
つて之を観れば、則ち士の心を立つるのみ。士の心
●こうさん
は、則ち孟子の謂はゆる恒産無くして恒心ある者は、
た
惟だ士能くすと為すものなり。其の恒心とは、何ぞ
や。貧賤禍害を以て善を為すの心を易へざるなり。
故に学者は先づ其の心を立てて以て聖学に従事すれ
しゆし
ば、則ち種子を下して成実を望むが如きなり。因て
●ふそく
不息の功を用ふれば、乃ち賢と為り聖となる、それ
いた
亦た是れに由りて臻らんか。
或問 立志之義 、曰、先知 志学 而可矣、曰、心
之所 之謂 之志 、是歟、曰、否、此非 立志之志
之義 也、夫志字从 士从 心、由 是観 之、則立
士之心 焉耳、士之心、則孟子所 謂無 恒産 而有
恒心 者、惟土為 能、其恒心者、何也、不 以 貧
賤禍害 易 為 善之心 也、故学者先立 其心 、以
従 事於聖学 、則如 下 種子 望 成実 也、因用
不息之功 、乃為 賢為 聖、其亦由 是臻焉乎、
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●从。従ふ。
●恒産。孟子梁
恵王上篇に見ゆ、
生活に困らぬ一
定の産業。
●不息の功。自
彊息まざる仕事。
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