● き こ こと
八九 無声に聴き、無形に視ると。子の親に事ふる、
かく
情を致し心を尽すこと、乃ち此の如きに至らば、則
ちか
ち孝に庶し。臣の君に於ける如き、其の志無声に聴
●べんへいかんねい
き無形に視るに在る者は、多くはこれ便嬖奸侫の小
人にして、而て決して忠臣義士にあらざるなり。親
つか つか こゝ
に事ふると君に事ふるとの別、是に於て見るべし。
こ
然り而て子の無声に聴き、無形に視、以て親の志を
すくな
養ふ者、天下に鮮く、而て臣の無声に聴き、無形に
● むか なげ
視て以て君の悪を逢ふる者、天下に多し。これ慨く
べきなり。
聴於無声、視於無形、子之事親、致情尽心、
乃至如此、則庶乎孝矣、如臣於君、其志在
聴於無声、視於無形者、多是便嬖奸侫之小人、
而決非忠臣義士也、事親与事君之別、於是
焉可見矣、然而子聴於無声、視於無形、以養
親志者、天下鮮、而臣聴於無声、視於無形、
以逢君悪者、天下多矣、此可慨也、
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●無声云々。親
の意中を注意し
て之を前知する。
●便嬖。便利に
御用をきく寵臣。
●悪を逢ふ。逢
ふは迎ふの意。
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