●しうてい
一〇四 諸儒に史論あり、而て周程陽明先生等、史論
まれ
に及ぶこと亦た罕なり、何ぞや。夫れ古今の英雄豪
な
傑は、多く情欲上より做し来る。情欲上より做し来
れば、則ち驚天動地の大功業と雖も、要するに夢中
●ぎりやう
の伎倆のみ。夢の是非を評するは、明道君子の言ふ
を欲せざる所にして、これ史論の亦た罕なる所以な
るか。故に周程陽明先生は、終日言ふ所論ずる所、
ろかう ●こんむ
惟だ英雄豪傑より閭巷の愚夫婦に至るまでの昏夢を
くわんせい
喚醒するのみ。其の書を読まば、其の苦心諸儒の史
論より甚しきを見るべきなり。
諸儒有史論、而周程陽明先生等、及史論亦罕
焉、何也、夫古今之英雄豪傑、多従情欲上做来、
雖従情欲上做来、則驚天動地之大功業、要夢
中之伎倆而已、評夢之是非、明道君子之所不
欲言、而是所以史論之亦罕也歟、故周程陽明
先生終日所言所論、惟喚醒自英雄豪傑至閭
巷愚夫婦之昏夢而已耳、読其書、可見其苦
心甚乎諸儒之史論也、
●すんてつ
一〇五 良知を致すの三字は、其れ人を殺すの寸鉄
か。
致良知三字、其殺人之寸鉄矣乎、
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●周は周渓、
程は程明道、程
伊川を云ふ。
●伎倆。手なみ、
技術。
●昏夢。迷へる
行動。
●短かい刃物。
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