山田準『洗心洞箚記』(本文)86 Я[大塩の乱 資料館]Я
2009.10.24

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『洗心洞箚記』 (本文)

その86

山田 準訳註

岩波書店 1940 より



◇禁転載◇

上 巻訳者註

   むらさき          てい    ががく 一〇九 紫の朱を奪ふを悪むなり、鄭声の雅楽を乱る              くつがへ  を悪むなり、利口の邦家を覆す者を悪むと。今両眼  ありて明ならざるものは、紫を好むこと朱より甚し。       そう             いと    こ  両耳ありて聡ならざる者は、鄭を好み雅を厭ふ。這                 おぼ  の心あつて開かざる者は、利口に溺れて忠告直言の    へいあつ            おほ  人を屏遏す。これ皆習気情欲良知を葢ふを以てなり。                   ゑん  もし、葢ふ者除かるれば、則ち良知は宛然として出                     しか  づ。然る後之を悪むこと聖人と一般なり。否らざれ  ば則ち書史を窮め文章に富むと雖も、猶紫を好み鄭  を好むと、利口に溺るるとは、未だ嘗て凡俗人に異  ならざるなり。かくの如き人にして下に在らば、則  ち必ず徳を亡ぼす、上に在らば則ち夫子の戒むる所                   きかん  を免れざるなり。鳴呼、これ聖人の亀鑑にして、万     世誣ひざるものなり。   悪紫之奪朱也、悪鄭声之乱雅楽也、悪利口之   覆邦家、今有両眼而不明者、好紫甚乎朱、   有両耳而不聴者、好鄭厭雅、有這心而不開   者、溺於利口、而屏遏忠告直言之人、此皆以   習気情欲葢良知也、若葢者除、則良知宛然出焉、   然後悪之与聖人一般、否則雖書史文章、   猶好紫好鄭、与於利口、未嘗異於凡俗人   也、若人而在下、則必亡徳矣、在上則不於   夫子之所戒也、鳴呼、此聖人之亀鑑、万世不誣   者也、



紫云々。論語
陽貨篇に出づ、
紫は間色、鄭声
は淫、雅は正、
利口は巧弁。覆
は顛覆。



屏遏。退け止
む。

宛然。さなが
ら、本のまゝ。


『洗心洞箚記』(本文)目次/その85/その87

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