ぐ び
一一三 良知は各々具備すること、地中の水の如し、
● さか
有らざることなし。之を致すの難き、水に逆ふ舟の
おこた ●じゆん
如し、惰れば則ち退いて進まず。荀子之を致すの難
み せいあく
きを覩て遂に性悪と謂ふ。孟子有らざるなきを見て、
だん
断じて性善と謂ふ。それ之を致すの難しと雖も、然
れども有らざるなければ、則ち本来の性は固より善
くわん かく
のみ。故に性善の説万世に冠し、確乎として其れ易
ふべからざるなり。然れども之を致さざれば、則ち
視聴言動皆道を離る。皆道を離るれば則ち果して人
か、抑々獣か。もし獣ならば則ち性果して善か、抑々
●
悪か。吾れ荀説の世に孚するを恐るなり、是の故に
学者は志を立て以て之を致さざるべからざるなり。
良知各具備焉、如地中水、無不有、致之之難、
如逆水舟、惰則退而不進、荀子覩致之之難、
遂謂性悪、孟子見無不有、断謂性善、夫雖
致之之難、然無不有、則本来之性、国善也已
矣、故性善之説、冠于万世、確乎其不可易者
也、然不致之、則視聴言動皆離道矣、皆離道
則果人乎。抑獣乎、若獣也則性果善乎、抑悪乎、
吾恐荀説之孚于世也、是故学者不可不立志
以致之也、
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●致。徹底的に
実行すること。
●荀子。周末戦
国の学者、孟子
と並べて孟荀と
称せらる、其著
二十篇、中に性
悪篇あり、人性
の悪を主張す。
●孚。人に信ぜ
らるること。
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