昨日、牛門の家宰岡本戸太夫等三人来り、家中飢渇の事嘆訴す、
○今朝郷書数通を裁す、
○登殿、無事被為召、御前へ罷出たるに、韮山へ書を遣し、大塩の
密書を手に入候やう御意、此事は、去月十四日に、韮山御代官江川
太郎左衛門より我へ一書を贈り、東海道にて大塩平八郎より閣老並
林大学頭へ与るの書手に入たる中に、 水戸公へ奸賊より呈するの
書一通あり、何れも容易ならざる事ゆゑ、取計方官府へ訴たり、扨
此密書ども、内々写取り、公へ呈し度思へ共、如何の程合なるべき
との書なり、江川、実に我が公の御為を存し候ならば、直にその密
書どもを写し取、我へ遣し、一覧の上、公へ呈覧するとも、又は返
すとも、せよと申遣すべき筈なるに、先づ我へ聞たる上に而、密書
を写し出すべしとは心得がたきなれば、我は取敢ず、奸賊の書、内々
に而水戸殿一覧いたし候筈無之由を答へたり、其由は委細に執政清
虚子へ談じたる上にて取計ひ、明十五日、 公へも言上せり、然る
に奸賊戮につきたる事、 公にも被聞召、今は嫌疑もあるまじきと
との思召也、叉手斎藤弥九郎、去月中より江川の頼にて浪華へ赴き、
近々帰着すべし、弥九郎に逢たらば、江川の心中も明白に分候半と
存るゆゑ、一と先づ斎藤弥九郎へ対面の上、江川へは一書を贈るべ
きよし、言上せり、
○七ツ時過、舎に帰れば、家人曰く、過刻斎藤弥九郎来りたり、さ
らば、斎藤に逢はんと直に飯田町へゆきたるに、斎藤、一昨日帰り
たるよしに而、数刻対話、大に浪華の情実を得たり、事は浪華騒擾
記事にしるせり、
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