伝説云　先生年十八九ノ頃市中盗難頻出シテ賊未ダ得ラレズ人心洶々タリ。両組与力同心只奔命ニ労ルゝノミ、時ニ先生火防町廻役ニ奉スレドモ、未ダ本役ニアラス職司至テ軽シ然レドモ一旦事ニ当レバ誠意熱中シテ止マザルハ其性也、

先生以為ラク市面物騒老職尽瘁其職未ダ獲ラレザル是レ尋常盗賊ノ業ニアラズ必ズ由アラン、吾微職ト雖ドモ之ヲ得ザルハ公ノ耻也ト、即チ寝食ヲ忘レテ心窃ニ之ヲ期ス、既ニシテ先生ノ烱眼早ク其ノ海賊ノ所業ナルヲ看破シ、遂ニ偵シテ有馬家留守居神道某ト称スル怪賊ヲ捕フ、奉行糾弾終ニ其実ヲ得タリ、

賊実ハ妙見剛右衛門又一ニ親船覚右衛門ト云フ、海賊ノ張本也、

是ヨリ先キ多年瀬戸海ニ拠リ商船漁船ヲ掠奪シ居タルモノ、近年捜査厳ナルヲ以テ船ヲ商船ニ擬装シ、近海ニ漂泊シ市中ヲ暴掠ス、船中与党三十余賊アリ、変装自由蓋シ近代海賊ノ巨頭ト云フ、次テ皆ナ捕ハレ、市民初メテ堵ニ安ンズルヲ得タリ、

是ヨリ先生ノ英名初テ高シト云フ 岡田梅荘筆記大塩後素記伝

朝鮮遣使来（和漢）露船理井尻に来る
○大槻茂質に蘭書を翻訳せしむ、洋学官是に始る（万国）