Я[大塩の乱 資料館]Я
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2001.1.4

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「大塩の乱関係論文集」目次


『大 塩 平 八 郎 伝』 その35

石崎東国著(酉之允 〜1931)

大鐙閣 1920

◇禁転載◇


収録にあたって、適宜改行しています。
また、明らかに誤植と思われるものは訂正しています。

   文政八年乙酉先生三十三歳

洗心洞入学
盟誓ヲ作ル。
是年正月十四日先生私塾ニ洗心洞入学盟誓七條ヲ制ス、蓋シ是ヨリ先キ諸生ノ入学スルモノ漸ク多シ。生徒漸ク多ケレハ又従テ師弟ノ名正サザルヲ得ス、

生徒ノ躬行責メサルヲ得ス、塾政自ラ理セサルヲ得サル也。即チ茲ニ盟誓ヲ定メ、又王陽明先生ノ龍場諸生ニ示ス立志、勧学、改過、責善四章ノ格言ヲ自書シテ講堂西面ニ掲示ス、之ヲ学堂西掲ト云ヒ、又呂新吾先生ノ格言十八條ヲ書シテ東面ニ掲ケ学堂東掲ト云フ。

更ニ夏四月ニ至リ陽明先生ノ天成篇ヲ書シテ洗心洞ニ掲ケ生徒ニ示ス、是ニ於テ塾制初テ整フ、先生公余ヲ以テ生徒ニ教授ス。門人日ニ進ム。

    按スルニ先生第内極テ広シ、中ニ三塾アリ、曰ク故塾、曰ク中塾、曰ク新塾、故塾ハ所謂講堂ノ在ル所講堂ヲ読礼堂ト云フ、中塾ハ所謂洗心洞、先生ノ書斎茲ニアリ、初メ之ヲ中軒トイヒ後中斎ニ改ム。新塾ハ所謂文武ノ稽古所後年東隣ノ旧宅ヲ修理シタルモノニ係ル、新塾尤モ【門/広】恢小諸侯ノ黌舎モ及ハサル也。洗心洞ト竹林ヲ隔ツ、若夫洗心洞ノ蔵書ニ至テハ数千帙、書庫土蔵一棟アリ、猶溢レテ講堂書斎ニ至ル書ニアラサルハ無ク、中ニ一切経、新訳洋書ニ至ルマテ諸子百家貯ヘサル無シ。 塩賊伝並ニ洗心洞余瀝

      洗心洞入学盟誓

    欲学聖賢之道以為人、則師弟之名不可不正也、師弟之名不正、則雖有不善醜行、誰敢禁之、故師弟之名誠正、則道行乎其間、道行而善人君子出焉、然則名問学之基也、可不正哉、某雖孤陋寡聞、以一日之長、任其責、則不得辞師之名、而其名之壊不壊、大率在下文條件之立不立、故結盟於入学之時、以預防于其流不善之弊。

    主忠信、而不可失聖学之意矣、如為俗習所率制、而廃学荒業以陥奸細淫邪、則応其家之貧富、使購某所告之経史以出焉、其所出之経史、尽附諸塾生、若其本人而出藍之後、各従其心所欲可。

    学之要、在躬行孝弟仁義而己矣、故不可読小説及異端眩人之雑書、如犯之、則無少長、鞭朴若干、是則帝舜朴作教刑之遺意、而非某所創也。

    毎日之業、先経業而後詩章、如逆施之、則鞭朴若干。

    不許陰締交於俗輩悪人、以登楼縦酒等之放逸、如一犯之、則与廃学荒業之譴同。

    一宿中不許私出入塾、如不謀某、以擅出焉、則雖辞之、以帰省、敢不赦其譴、鞭朴若干。

    家事有変故、則必諮詢焉、以処之有道義故也、非某欲聞人之陰私也。

    喪祭嫁娶及諸吉凶、必告於某、与同其憂喜、

    犯公罪、則雖族親不能掩護、告諸官以任其処置、願們小心翼々莫駘父母之憂。

      右数件勿忘勿失最是盟之恤哉。

      児童日課大略

    毎暁卯上刻、収枕席、皆盥漱梳櫛、読新理書、読終退而読其書十過、疑忘不許放過、必就正焉、然後読旧理書、十簡、疑忘亦復然、習書而後写字、写字而後誦詩背誦、而後韻字平仄就正為、酉中刻就寝。洗心門詩文下巻

洗心洞ノ内
容斯クノ如
シ。
洗心洞余瀝云 塾の模様で御座りまするか、塾が即ち洗心洞で、玄関を上りますれば西側は書架でつまつて御座ります、右へ来れば塾の方へ往きまするので、左の方が講堂、其後ろが先生の書斎、それから勝手向で御座ります、講堂は読礼堂と申しまして、自身の書斎が中斎、勝手の方は鏡中観花舘と云ふ額が上つて御座りましたが、塾生の入ることは決して許しません、塾則で御座りまするか、どふも余程年のたちますので写して持て居りましたがつい失つてしまいました。聖像で御座りまするか、はい床にかけて御座りまして 祭典は中々厳重なもので御座ります、大塩は朝七ツ時に起きましてすぐ講義が一度御座ります、それから五ツ頃に出仕せられ、八ツ頃に役所より帰られまして、すぐ一回講義が御座ります、それから二三度もある事があつて毎日大抵四五回づゝ講義が御座ります、門弟は大抵与力衆で四五十人も御座ります、塾生は十七八人許りで余は皆通うて来られました、門弟衆の内で姓名を覚えて居りまするのは山口平吉、渡辺重左衛門、瀬田犀之助、小泉延次郎、橋本忠兵衛、同梶五郎の人々で御座ります云々。

是年五月城代松平周防守罷メ水野左近将監忠邦之ニ代ル。

是年八月十五日夜先生友ヲ会シ大学悪於上之章ヲ講ス、一時興起スル者多シ、先生因テ詩ヲ賦ス曰ク 洗心洞詩文

    偶会同朋是仲秋、
    簾前桂影謾西流。
    各認霊台別有月。
    寧随児女上南楼。


年表参考

四月上総土冠(寇)寇起る
○異船大阪漂民を送り来る
○清国甘粛義倉を設く
○露国ニコラス一世即位
○ジヨン、クインシーアタムス大統領となる(万国)

   


石崎東国「大塩平八郎伝」目次その2(年譜)
その34その36

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