Я[大塩の乱 資料館]Я
2013.11.25

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「大塩の乱関係論文集」目次


『大塩平八郎』

その80

香川蓬洲

精華堂書店 1912

◇禁転載◇

第十六席 (4)

管理人註
   

                          いら  扨此方は跡部山城守、御役宅ではございますか、奥方も在つしやいます し、また女中も居ります、今日は雨降りでもございますから、奥のお居間  ごしゆ      いら      そば で御酒を召上つて在つしやる、お傍には牛尾善之助と云ふ家来がお相手を して居ります。  『善之助、大分大降りになつたやうぢやな』  『左様でございます、当年もまた昨年のやうに、春から長雨にならね                こり\/ ば宜しうございます、モウ雨には懲々でございます』  『左様ぢや、雨の為めに今年もまた凶作であると、此上に難義をする    者が殖えるからナ』  『夫れに就きまして申上げます、先般大塩平八郎が施行をいたしまし たに就いて余程また彼れの評判が高く相成りまして、到る処で其噂を致し て居りまする』  『アゝコレ/\善之助、平八郎の事は聞きたくない、サゝ酒を飲め/\』  『ハツ、有難う存じます』  善之助は云はなくツても宜いのに、大塩平八郎の事を云ひ出したので、 今更手持無沙汰で居ります処へ、用人野々村次平が参りましして。  『申し上げます』  『何ぢや』  『平山助次郎、御前に御目通りを願はれます』  山城守は手に持つて居た盃を下に置き。                       こよひ  『助次郎が予に逢ひたいと申すのか、彼れは今夜の泊番か』  『イエ左様ではございません、何か密々申し上げ度い儀がございます           あちら やうに申されまして、彼方に控へ居りまする』         たい  『密々に申し度事とは如何なる事か、兎も角も逢て遣はすから、併し 何んの用か居間一度聞いて参れ』  『ハツ』  と云つて立つて行きましたが、直にまた御前に手を突きまして。  『他聞を憚る一大事が出来いたしましたから、是非お目通が致し度い と申されます』



石崎東国
『大塩平八郎伝』
その113

『塩逆述』
巻之五
「その12」


『大塩平八郎』目次/その79/その81

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