重扇助「演劇脚本大汐噂聞書」11

Я［大塩の乱資料館］Я
2014.10.18

「大塩の乱関係論文集」目次

『演劇脚本大汐噂聞書』
その１１
重扇助

中西貞行　1894

◇禁転載◇

三幕目　大坂城内の場　（３）
管理人註

　　
　　造物　二重金襖　上下障子　　家体二重に司馬之助、淵次郎居る、　　平舞台に盗賊一人、四ケ所、此傍に城内、四ケ所の小頭居る、　　誂らへの鳴物にて道具止る 城　内　仰附けられ升たる科人、召捕り升て厶り升る 司馬之助　ヲヽ太義／＼、其方が働きにて捕得がたき大罪人、早速に手廻　　　り、嘸御満足にあらう 淵次郎　追附け弓削殿、大塩殿お越しの上、御褒美の沙汰もあらん、相待　　　居やれ 城　内　畏つて厶り升る　〔ト　奥より新左衛門出て 新左衛門　御両所、お役目御太義千万、小頭、城内申附けた科人は 城　内　ハアヽ、召捕升て厶り升る 新左衛門　ヲヽ太義／＼ 司馬之助　コリヤ／＼城内、大塩公より仰附けられたる五人の強盗、未だ　　　召取らぬか 城　内　ヘイ、其五人の奴等も、夜前残らず召捕升て厶り升る 新左衛門　イヤ、驚き入たる城内が働き、出かした／＼ 淵次郎　コリヤ城内、大塩氏御出席ある迄、奥庭へ引すへ急度張番申附け　　　い 城　内　畏つて厶り升る、ソレ 四ケ所　科人立て ○　　　アヽ今迄の罪亡ぼしじや、そんなら頭　〔ト　いふを 城　内　うせさらせ○ 　〔ト　科人橋掛りへ這入る 城　内　イヤ新左衛門様、誠に此度は命懸けの働きで厶り升れば、何卒御　　　褒美の義を、ヘイ／＼お願ひ申上げ升る　〔ト　奥より 平八郎　ヲヽ其褒美遣はさう　〔ト　出る 新左衛門　是は／＼大塩氏 平八郎　弓削氏には御苦労千万、イヤ何、城内、申附けた科人、まつた五　　　人の強盗召捕じや、取て置け 城　内　有難う存じ升る、ドレ一寸拝見仕り升る、何々一此城内と申者、　　　夜盗の者共をかたらひ、金銀財宝を貪ぼる科に因て召捕り、永牢た　　　るべき者なり○何じや、此城内が夜盗をした、イヤサ何時金銀を貪　　　つた、お上の仰せを一づに守り、御奉公を大切に勤むる程の城内だ　　　ぞよ 平八郎　コリヤ、よつく聞け、汝、夜盗の者を羽かへ下に置き、其者共に　　　働らかせ、歓楽にのみ暮らし、若し其盗賊を召捕れと申渡せば、其　　　者に申含めて召捕り出し、うぬが高見で手抦顔、先刻の盗賊が此所　　　を立つ砌り、そんなら頭となぜ申した 城　内　ヤ 平八郎　まだ此上にあらがへは、彼盗賊を引出し、此場に於て拷問せうか 城　内　サア夫は 平八郎　但し真直ぐに白状致すか 両　人　サア／＼／＼ 平八郎　城内、恐入つたか○ソレ縄打て 四ケ所　ハアヽ 城　内　イヤ大塩様はゑらい者じやが、おいらの悪事は顕はしても、どゑ　　　らい盗人が目の前にぶら／＼してあるのに、夫が見へぬとは、是が　　　灯台本暗しじやなア 新左衛門　イヤ、血迷ふて由ない事を申すな、何所からどう廻つて、誰が　　　難儀○イヤ誰も尋ねも致さぬ義を申出ずと、きり／＼立て 城　内　立升まい、コレ大塩殿、成程おれは盗人の分一をはねて栄耀をし　　　たが、夫も夫々に賄して金でする仕事じや、まだおれよりは、れつ　　　きとした上下を着た大盗人も、次手にせいらくしやしやれいの 淵次郎　シテ其上下を着た盗賊とは、そりや何者 司馬之助　サア真直に白状致せ 城　内　白状せいでなるものか○コレ新左衛門殿、化の皮を脱いで仕舞は　　　んせ　〔ト　大塩、助次郎にき、助次郎奥へ這入る

「大塩噂聞書」（摘要） 誂(あつ)らへ 厶(ござ)り (ささや)く

三幕目　大坂城内の場　（３）	管理人註
	造物　二重金襖　上下障子　　家体二重に司馬之助、淵次郎居る、　　平舞台に盗賊一人、四ケ所、此傍に城内、四ケ所の小頭居る、　　誂らへの鳴物にて道具止る城　内　仰附けられ升たる科人、召捕り升て厶り升る司馬之助　ヲヽ太義／＼、其方が働きにて捕得がたき大罪人、早速に手廻　　　り、嘸御満足にあらう淵次郎　追附け弓削殿、大塩殿お越しの上、御褒美の沙汰もあらん、相待　　　居やれ城　内　畏つて厶り升る　〔ト　奥より新左衛門出て新左衛門　御両所、お役目御太義千万、小頭、城内申附けた科人は城　内　ハアヽ、召捕升て厶り升る新左衛門　ヲヽ太義／＼司馬之助　コリヤ／＼城内、大塩公より仰附けられたる五人の強盗、未だ　　　召取らぬか城　内　ヘイ、其五人の奴等も、夜前残らず召捕升て厶り升る新左衛門　イヤ、驚き入たる城内が働き、出かした／＼淵次郎　コリヤ城内、大塩氏御出席ある迄、奥庭へ引すへ急度張番申附け　　　い城　内　畏つて厶り升る、ソレ四ケ所　科人立て ○　　　アヽ今迄の罪亡ぼしじや、そんなら頭　〔ト　いふを城　内　うせさらせ○ 　〔ト　科人橋掛りへ這入る城　内　イヤ新左衛門様、誠に此度は命懸けの働きで厶り升れば、何卒御　　　褒美の義を、ヘイ／＼お願ひ申上げ升る　〔ト　奥より平八郎　ヲヽ其褒美遣はさう　〔ト　出る新左衛門　是は／＼大塩氏平八郎　弓削氏には御苦労千万、イヤ何、城内、申附けた科人、まつた五　　　人の強盗召捕じや、取て置け城　内　有難う存じ升る、ドレ一寸拝見仕り升る、何々一此城内と申者、　　　夜盗の者共をかたらひ、金銀財宝を貪ぼる科に因て召捕り、永牢た　　　るべき者なり○何じや、此城内が夜盗をした、イヤサ何時金銀を貪　　　つた、お上の仰せを一づに守り、御奉公を大切に勤むる程の城内だ　　　ぞよ平八郎　コリヤ、よつく聞け、汝、夜盗の者を羽かへ下に置き、其者共に　　　働らかせ、歓楽にのみ暮らし、若し其盗賊を召捕れと申渡せば、其　　　者に申含めて召捕り出し、うぬが高見で手抦顔、先刻の盗賊が此所　　　を立つ砌り、そんなら頭となぜ申した城　内　ヤ平八郎　まだ此上にあらがへは、彼盗賊を引出し、此場に於て拷問せうか城　内　サア夫は平八郎　但し真直ぐに白状致すか両　人　サア／＼／＼平八郎　城内、恐入つたか○ソレ縄打て四ケ所　ハアヽ城　内　イヤ大塩様はゑらい者じやが、おいらの悪事は顕はしても、どゑ　　　らい盗人が目の前にぶら／＼してあるのに、夫が見へぬとは、是が　　　灯台本暗しじやなア新左衛門　イヤ、血迷ふて由ない事を申すな、何所からどう廻つて、誰が　　　難儀○イヤ誰も尋ねも致さぬ義を申出ずと、きり／＼立て城　内　立升まい、コレ大塩殿、成程おれは盗人の分一をはねて栄耀をし　　　たが、夫も夫々に賄して金でする仕事じや、まだおれよりは、れつ　　　きとした上下を着た大盗人も、次手にせいらくしやしやれいの淵次郎　シテ其上下を着た盗賊とは、そりや何者司馬之助　サア真直に白状致せ城　内　白状せいでなるものか○コレ新左衛門殿、化の皮を脱いで仕舞は　　　んせ　〔ト　大塩、助次郎にき、助次郎奥へ這入る	「大塩噂聞書」（摘要）誂(あつ)らへ厶(ござ)り (ささや)く

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『演劇脚本大汐噂聞書』 その１１ 重扇助

中西貞行 1894

三幕目 大坂城内の場 （３）

『演劇脚本大汐噂聞書』
その１１
重扇助

中西貞行　1894

三幕目　大坂城内の場　（３）