Я[大塩の乱 資料館]Я
2014.10.19

玄関へ

「大塩の乱関係論文集」目次


『演劇脚本大汐噂聞書』
その12

重扇助

中西貞行 1894

◇禁転載◇

三幕目 大坂城内の場 (4)

管理人註
  

新左衛門 ヤイ/\うづ虫め、コリヤ引かれ者の小唄とやらで、口からの    出たらめか、相役たる大塩殿も是に厶る、馬鹿つくさずと、きり/\    獄屋へうせおらう 城 内 イヤ、こんな時に尻持て貰うと思へばこそ、手下の奴等が、働い    た金を高二分はこなたの所へ納めるに、命の瀬戸に素知らぬ顔、夫    じやに因て何も角も打まくのじや 新左衛門 ヤア身に覚へなき其雑言、うぬ寧そ  〔ト 刀を持て立かける 平八郎 イヤ、お待被成、弓削殿。コリヤ大切なる詮議の科人、手討に召    さるゝ御所存かな 新左衛門 イヤ全く以て 平八郎 左様でなくばお下に厶れ○イヤ何八田氏、此科人獄牢の内へ 淵次郎 ハアヽ○誰かある引立い    ハアヽ  〔ト 四ケ所出て 四ケ所 立て 城 内 今日迄下に使つた奴等でも、斯うなりや仕方がない、いたはつて    貰ふぞや○ヲイ弓削の頭跡から早うごんせや 四ケ所 きり/\歩め 城 内 ドレ盛笊飯に有附うかい  〔ト 城内、四ケ所、淵次郎、橋掛りへ這入る 平八郎 木村司馬之助、申附けた品、是へ持て 司馬之助 ハアヽ  〔ト 奥より三宝に九寸五分を乗せ持て出る、大塩取て新左衛門の前に   置き 平八郎 イヤ新左衛門殿、御用意よくば 新左衛門 コリヤ腹切刀を某に突附て何とするのじや 平八郎 何とするとは愚かな一言、斯く計らひしは某が情けの計ひ○家が    大事か其身が大事か 新左衛門 ヤ 平八郎 新左衛門殿、情けない御所存じやナア○弓削、内山、大塩は数代    連綿たる家ネならずや、夫れに何そや身の慾に魂ひ奪はれ、盗賊よ    り賄賂を貪り、其身の栄花如何程包うと召されても口さがないは下    郎の癖、若しや奉行へ露顕とならば、逆磔は遁れぬ科、左ある時に    は、従類迄絶やさるゝは是必定、貴殿切腹致され、子息新之助を以    て弓削の相続致させなは、万代不易、承引なくば先祖代々家名を穢    し升るぞ 新左衛門 サア夫は 平八郎 但し屑く切腹あるか 両 人 サア/\/\ 平八郎 何時迄生ると思はつしやるぞ、尋常に切腹召され 新左衛門 モウ此上は  〔ト 大塩に切てかゝる、一寸立廻りあつて平八、九寸五分を新左衛門   の腹に突込み 平八郎 遖れ切腹、ソレ司馬之助、介錯致せ 司馬之助 ハアヽ  〔ト 新左衛門の首を切る、上手障子家体より伊賀守見て居て 伊賀守 大塩が計らひ感心致した 平八郎 ハアヽ奉行職のお詞、恐入り奉る、新左衛門自滅の上は、新之助    を以て弓削の家督相続致させ度、偏に願上げ奉升る 伊賀守 イヤ、夜盗に組せし弓削新左衛門、跡目の義は罷成らぬ 平八郎 アイヤ、未だ盗賊に組せしとも不分明に厶れとも、悪名受けしが    残念さに切腹なしたる弓削氏なれば、罪の疑はしきは軽く計らふ、    天下の政道、まつた此事鎌倉殿の上聞に達しなば、両奉行職は固よ    り相家老の我々迄役義の怠り 司馬之助 武士たる者は相身互ひ、何卒家督の義 平八郎 お聞届け被下様、偏に願ひ 両 人 上奉升る 伊賀守 取上げ難き願ひなれども、其方等が願ひ、聞入れぬも本意にあら    ず、忰新之助に弓削の相続ゆるしてくれるぞ 両 人 エヽ有難う存じ升る 平八郎 コリヤ、木村、平山、此死首を弓削の屋敷へ持算致し、伊賀守様    の御仁誠、つぶさに申聞かして参れ 司馬之助 ハアヽ委細畏り奉り升る  〔ト 首を持て向ふへ這入る

大塩噂聞書」
(摘要)











寧(いつ)そ










厶(ござ)り

































































屑(いさぎよ)く











遖(あつぱ)れ






























偏(ひとえ)


『演劇脚本大汐噂聞書』目次/その11/その13

「大塩の乱関係論文集」目次

玄関へ