Я[大塩の乱 資料館]Я
2014.10.21

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『演劇脚本大汐噂聞書』
その14

重扇助

中西貞行 1894

◇禁転載◇

三幕目 大坂城内の場 (6)

管理人註
  

  造物 高二重金襖、上下落間 網代塀 大なる桜の実木   桜の釣枝 二重前側障子   例の所 切戸誂らへの相方にて道具止る  〔ト 障子の内にて 梶五郎 御上使様には、御退屈に厶り升せう 弥九郎 障子を開き、ちと御気鬱を 両 人 お晴らす遊ばし升せう  〔ト 前側障子を開くと、真中に紀伊守、左右に梶五郎、弥九郎居る 紀伊守 今日は種々のもてなし、過分に存ずる 梶五郎 イヤ、何がなお慰みにと存じ升たれど、是ぞと申趣向もなく、此    上は女中方を呼出し、琴三味線の一曲、お慰みに差上け申さん 弥九郎 ソレ女中方、御用意よくば急いでこなたへ 女 中 ハアゝ  〔ト 向ふより小菊、呉羽、若竹、綾葉、松ケ枝、お次、筒花生に、梅、   桜、山吹、杜若、卯の花、藤の花を入て、名々に持出て 小 菊 君ならて誰にか見せん梅の花色をも香をも知る人そ知る 呉 羽 色見へて美し物は世の中の人の心は本にそなりれる 若 竹 君様へ見せもし見もし好もしい紫色にしやちはつた藤 綾 葉 山吹の花に色香はありなから実のらぬ事のなとか恨めし 松ケ枝 浅池の水に花咲く杜若江戸紫の色そ恋しき お 次 月と迄見紛ふものは卯の花の盛り床しき賤か生垣 小 菊 御上使様へお慰みに 松ケ枝 私等が此御献上 お 次 御覧被成て被下升せうならば 皆 々 有難う存じ升る 紀伊守 イヤ、あてやかなる贈物、過分にこそあれ 弥九郎 ソレ御上使には御賞美のお詞、先々是へ 小 菊 左様なれば お 次  お免るし被成て 皆 々 被下升せう  〔ト 舞台へ来る 紀伊守 シテ各々は何人の息女なるぞ 小 菊 ハアヽ、私事は内山彦次郎が妹、小菊と申升る者 呉 羽 私事は白井幸右衛門が妹、呉羽 若 竹 萩原弥九郎が妹、若竹 綾 葉 吉見九郎右衛門が娘、綾葉 松ケ枝 庄司儀左衛門が娘、松ケ枝 お 次 恐ながら、私は大塩平八郎が娘、次と申升る者 小 菊 お見知り置れ 皆 々 被下升せう 紀伊守 何れ劣らぬ口吟み、分けて秀逸は卯の花の一首、心ありげな詞の    てには、ハテ奥床しい 若 竹 イヤ/\申、御上使様、奥床しいは藤の火木とさへ見れば嫌ひな    く、しめつからみつ花咲かす、こんなしほらしい花は厶り升せぬ故、    御上使様へ私が心を籠めた捧げ物、夫がお目に留らいで、何の風情    もない卯の花が、お目に留るといふは、本に物好きな御上使様であ    るわいなア 小 菊 是は又はしたない、若竹様、御上使様へ余りの失礼、ちとお扣へ    被成升せ 紀伊守 アイヤ、詞咎めは席による、打捨て置きやれ

大塩噂聞書」
(摘要)





誂(あつ)ら

厶(ござ)り


『演劇脚本大汐噂聞書』目次/その13/その15

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