Я[大塩の乱 資料館]Я
2014.10.24

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「大塩の乱関係論文集」目次


『演劇脚本大汐噂聞書』
その17

重扇助

中西貞行 1894

◇禁転載◇

三幕目 大坂城内の場 (9)

管理人註
  

紀伊守 ヤヽそちや鹿蔵、此体は 三 平 愚かや吉五郎、日外より汝が有家馬士となつて尋ぬる内、九條村    にて出くはし、態と汝が一味となつて実否を探るに、案に違はず八    坂の強盗、幻の吉五郎、斯いふ我は大塩平八郎が若党三平といふ者 彦次郎 斯く証人のある上は、きり/\かたりと申て仕舞へ 紀伊守 サア夫は 彦次郎 但し踏附け縄うけやうか 三 人 サア/\/\ 彦次郎 爰を何所と心得おる、忝くも大坂の殿中なるぞ、無礼者め、下り    おろう  〔ト 蹴落す 紀伊守 とう/\一番やりそこなつた○  〔ト 刀を取り、上の着物を脱ぎ、じよらを組み 紀伊守 ヲヽ、内山どん、成程爰へかたりに来たのだ、実はおりや京の生    れで、餓鬼の折から手癖が悪く、賽銭箱から取上げた悪事も今じや    功が積み、勝時丸といふ刀、そいつを一番巻上げやうと、着附も仕    ない上下も金拵らへの大小も、亜鉛滅金の剥易く、地金は赤の道楽    者、悪い事なら月代の五分でもすきのねへ様と、紀伊守といふ名か    ら、髪仕立の大髢、曲つた心の刷毛先を、油を附けて真直に立、役    仕込みの偽上使、一盃喰はせた狂言も、斯う見出されたら元の木阿    弥、今日爰に居て、又明日は形を変へて、人の目をくらます故に、    幻と異名に取たお尋者、吉五郎とはおれが事だ 之助 ヤア存外なるあふれ者、イザ此上は召捕て、一味の者共白状させ    ん 紀伊守 エヽ喧ましいわい、がらくため、うぬ等を相手に仕ねへのたせ、    是からは内山どん、おめへとおれの相対づく、仮令仕事がばれ様と、    勝時丸を渡すとも、金と転んで一箱か二箱位の骨折りを、おれに寄    越して扱ふとも、其返事を聞かない内は、貧乏ゆるぎも仕やしねへ 彦次郎 ヲヽ、其返答致してくれん、ソレ  〔ト 捕手大勢出て 大 勢 動くな 紀伊守 何を  〔ト 立廻りあつて上手の井戸へ飛込む 之助 ヤ曲者めは 皆 々 空井戸へ 彦次郎 済之助は跡追駈けよ 済之助 心得升た、ソレ  〔ト 井戸へ這入る 彦次郎 近藤、萩原両人は四門を堅めて捕逃すな  〔ト 皆々這入る 之助 合点の行かぬ、彼が人相、正しく彼は今川の 彦次郎 アコリヤ○荒立なば国の大事 之助 密かに召捕り、篤と実否を 彦次郎 油断ならざる世の有様○  〔ト 顔見合すが、木の頭 彦次郎 ハテなア  〔ト 是にて宜しく浅黄幕を冠せる返し

大塩噂聞書」
(摘要)



態(わざ)と












忝(かたじけな)く









じよら
あぐら













髢(かもじ)



















































木の頭
(きのかしら)
幕切れの台詞や
動作のきまりに
合わせて打つ拍
子木の最初の音


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