Я[大塩の乱 資料館]Я
2014.10.27

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「大塩の乱関係論文集」目次


『演劇脚本大汐噂聞書』
その20

重扇助

中西貞行 1894

◇禁転載◇

四幕目 天満天神前の場 同大塩屋敷の場 千日前法善寺前の場 (2)

管理人註
  

 〔ト 門の内にて 弥四郎・善之丞 サア/\お越し被成れ/\  〔ト 両人、お次を引張り、お律、附て出て お 律 申々貴君方、何と被成升るぞいなア 弥四郎 何とせうぞい、家中一統に評判の大塩殿の御息女 善之丞 我々此小山屋で一盃呑み升るから、失礼ながらお酌をお頼み申 お 次 アヽ申、今日はちと心願が厶り升て天神様へ御参詣致し升たれば、    どうぞお免るし被成て被下升せいなア  〔ト 忠兵衛、小隠れして見て居る お 律 夫々今お次様のおつしやる通り、大精進で厶り升 れば、お酌などはなり升せぬ/\、サア早うお出被成升せ 弥四郎 どつこい滅多に逃してたまるものか、サア来給へ/\  〔ト 両人にてお次を引張る、忠兵衛、中へ這入り 忠兵衛 マア/\お待被成て被下升せ お 次 オ其方は忠兵衛殿 忠兵衛 イヤ存じ升せぬ、通りかゝりの者ナ○ソレ通りかゝりの者で厶り    升るが、あんまり見兼て御挨拶に出升て厶り升る○私に任せて黙つ    てお出被成升せへ 弥四郎 ヤイ土堀め、なぜ邪魔致すぞ 善之丞 但しわれは縁者か 忠兵衛 滅相もない、誰あらう大塩様のお娘御様、百姓づれに縁者があつ    てよいもので厶り升う 弥四郎 然らば何故止立致す 忠兵衛 サア御酒の上とは申ながら、余りの御無体、相手は女の事、お免    るし被成て被下升せう、なればハイハイ有難う存じ升る 弥四郎 否だ、ならぬ、一旦いひ出したからは、酌をさゝねば武士が立ぬ 善之丞 うぬ、入らざる所へ出しやばると、カウ/\/\  〔ト 叩く、矩之丞、門の内より出て、是を見て、両人を見事に投げる 弥四郎 アイタヽヽヽ○うぬ素浪人め、 善之丞 何故我々を手込めに致す 矩之丞 ヤア、素浪人とは慮外千万、萩原弥四郎、清水善之丞、某を見忘    れたか 両 人 ヤ誠に汝は 矩之丞 以前は同じ家中の武士、宇津木矩之丞、失念を致したかい 弥四郎 如何にも存じておるが、其矩之丞が我々を 善之丞 なぜ此所へ投附けて 矩之丞 ヲヽ投げてくれたは拙者が寸志 両 人 とは又なぜ/\ 矩之丞 都て両腰たばさむ者は、夏は日表、冬は日蔭とよけて通るが是定    法、夫に何ぞや、此大道を我物顔で我儘横行、汝等如きに誰か恐れ    ん、皆帯刀に恐るゝを、われに恐ると心得違ひ虎の威を借る狐め等    が 弥四郎 ヤア、いはせて置けば出る儘の過言、其分では捨置かれぬ 善之丞 命惜しくば詫致せ、アノ爰な慮外者めが 矩之丞 以前は同じ朋友でも、お暇受けて武者修業に出たれば、行衛定め    ぬ天竺浪人、サア宇津木矩之丞が相手になる 弥四郎 アヽ是はしたり、矩之丞殿、何もお相手になると申ておるのでは    厶らぬ 善之丞 先刻より、御挨拶は承知仕ると申ておるでは厶らぬか 矩之丞 然らば御両所共に御得心が参り升たかな 弥四郎 参つたとも/\、此場は無異にお別れ申 善之丞 とはいふものゝ 弥四郎 ハテ扨厶れと申す  〔ト 両人向かふへ這入る

大塩噂聞書」
(摘要)









厶(ござ)り




























































































(わび)


『演劇脚本大汐噂聞書』目次/その19/その21

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