Я[大塩の乱 資料館]Я
2014.11.2

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「大塩の乱関係論文集」目次


『演劇脚本大汐噂聞書』
その26

重扇助

中西貞行 1894

◇禁転載◇

四幕目 天満天神前の場 同大塩屋敷の場 千日前法善寺前の場 (8)

管理人註
  

 〔ト 平八郎、出て門口を覗て居る 格之助 申、旦那様、其神様は目の悪いのにはお聞被成升せぬかへ 吉五郎 サア目の悪いのは、妙見様か日朝様を信心すると直るわいのう、    見た所が貴様は俄盲じやの 格之助 ハイ左様で厶り升る、風眼でつぶれ升て厶り升る  〔ト 吉五郎、思入あつて 吉五郎 そりや不自由な事であらうなア  〔ト 門口より 平八郎 お余り下さい 喜 助 何じや/\、日が暮てあるのに、こじまや殿がわせられたな 吉五郎 其余りをやつて下され 喜 助 ハイ/\○  〔ト 丼鉢へ入れて 喜 助 是は結搆な物ばつかり、口果報のあるお乞食様じやなア 平八郎 ヘイ/\、忝なう厶り升る 喜 助 時に先生、私はモウお暇申升る 吉五郎 然らば又明日お越し被成れ 喜 助 ヘイ/\、忝なう厶り升る  〔ト 門口へ出て、平八と一寸思入あつて向ふへ這入る 格之助 旦那様、上みは宜しう厶り升るが、下をやり升せうかな 吉五郎 イヤ/\、下はモウよい/\○  〔ト 立つて床の間の脇差を取つて来て、抜て 吉五郎 サア、療治代受取れ、  〔ト 差附ける 格之助 旦那様、コリヤ何を被成升る 吉五郎 按摩となつて入込んだは、盗賊方の廻し者であらうがな 格之助 如何にも、汝が推量通り、吉五郎、御上意  〔ト 引抜て四天股引になり、十手を出して、吉五郎の匕首を叩落す、   吉五郎、格之助を下手へ蹴やりて、両人急度なり 吉五郎 さういふうぬは何奴だ 格之助 某こそは大塩平八郎が忰、同苗格之助、サア尋常に縄に罹れ 吉五郎 ヤア小癪な、青二才め  〔ト 立廻りあつて、格之助、三宝の上の箱を取り 格之助 正しく宝剣 吉五郎 南無三、夫を  〔ト 取りにかゝると、平八、内へ這入つて箱を取る 吉五郎 うぬ非人め、邪魔するな 平八郎 ヤア、愚か/\○某こそは大塩平八郎、斯く非人と姿を扮せしは、    汝が詮議致さん為、最早遁れぬ八坂の強盗、幻の吉五郎、屑く縄に    罹れ 吉五郎 ヤア小さかしい其一言、勝時丸は取らるゝとも、今川の御内に於    て、伊藤伊予守が忰、伊賀之助、死物狂ひ成らば手ネに搦て見よ 平八郎 いじくも名乗りし汝が本名 格之助 伊賀之助とあるからは、天下の科人 平八郎 ソレ遁すな 皆 々 ハアヽ  〔ト 捕手大勢出て、立廻りあつて、吉五郎、欄間の上へ登る 平八郎 ソレ科人は家根へ脱けしぞ 格之助 皆々続け 皆 々 ハアヽ  〔ト 格之助、捕手を連れて下手へ這入る、平八郎、箱の中より短刀を   取出し 平八郎 紛ふ方なき勝時丸の御剣、我手に入りし上からは、軍勢催促心の    儘忝い  〔ト 三平、下手より出て 三 平 御主人様 平八郎 シテ吉五郎は 三 平 新手を加へて取囲めど、中々手ごはき彼が働き 平八郎 是非に及ばぬ、此上は飛道具にて撃て取れ 三 平 ハアヽ  〔ト 双方宜しく返し  〔ト 浅黄を冠せるどん/\にてつなぐ

大塩噂聞書」
(摘要)

覗(のぞい)て

日朝
(1422-1500)
室町中期の
日蓮宗の僧

厶(ござ)り















































匕首
(ひしゅ)
つばのない
短剣
あいくち

四天
(よてん)
歌舞伎の衣装
で、広袖で裾
の左右が切れ
込んでいる着
付け



















屑(いさぎよ)く


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