Я[大塩の乱 資料館]Я
2014.11.4

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「大塩の乱関係論文集」目次


『演劇脚本大汐噂聞書』
その28

重扇助

中西貞行 1894

◇禁転載◇

五幕目 天満平山屋敷の場 (1)

管理人註
  

     役人替名   一 平山助次郎    一 平山助左衛門   一 小泉淵次郎    一 奴一人   一 女房お律       竹本連中   造物 二重 襖 通り 石摺の唐紙   上手 障子 家体   下手 屋敷塀 例の所切戸二重に助左衛門、見台の本を読み、お律、   三宝に神酒徳利を乗せ、口紙を挿て居る誂らへの相方にて幕明く お 律 申、爺様、今日は磨利支天様の御縁日で厶り升れば、お神酒は調    へ升たが、洗米をお供へ申升せうかいなア 助左衛門 ヲヽ能く気が附た、今日縁日たる磨利支天は先祖より伝はる大    切なる守神、某退役致し、助次郎に家督致させ、其掛地も忰に譲り    しなれば、心を附けて信心の致したがよいぞや お 律 畏り升て厶り升る  〔ト 淵次郎、折助一人を連れ出て、直に居直り 淵次郎 お頼み申、助次郎様は御在宿で厶り升るかな お 律 是は/\淵次郎様、マア/\お通り被下升せ 淵次郎 然らば御免被下升せう○コリヤ/\、其方はお供部家を借受け    休息致せ    畏て厶り升る  〔ト 橋掛へ這入る 淵次郎 御隠居には、いつに替らず御息災なる体、珍重に存じ升る 助左衛門 是は/\、御挨拶恐入り升る、忰は日毎の御厄介、千万忝う存    じ升る、シテ今日の御入来は 淵次郎 助次郎殿にちと談合の義が厶つて参上仕つて厶り升る 助左衛門 左様で厶り升るか、態々との御入来に、忰が他行、近頃残念に   存じ升る お 律 モウ追附帰るで厶り升る○マアお上り被下升せ  〔ト 茶を出す 淵次郎 是は/\お搆ひ被下升るな  〔ト 向ふより助次郎出て居直り 助次郎 只今帰つたぞよ お 律 お帰りで厶り升るか 助左衛門 ヲヽ忰、先刻より淵次郎殿がお待ちじやわい 助次郎 是は/\、小泉氏には能うこそお越し被下升た 淵次郎 ちと内々御談合の義あつて態々 助次郎 スリヤ御談合の義あつて、イヤ何、親人、内談と厶れば、暫時の    間、此席をば 助左衛門 承知致した、イヤ何かお律、其方も奥へ お 律 心得升て厶り升る 浄るり 慇懃に挨拶、おれそれ老人は小腰かゞめて奥に入る、跡打見やり、    助次郎 助次郎 シテ御談合とは 浄るり 子細如何にと尋ぬれば 淵次郎 左れば先生大塩殿より火急の内用○兼て貴殿も御存じの如く、市    中の困窮見るに忍びず、大塩殿には、先達て堀伊賀守殿へ施行の義、    願出されしに、お聞済なき上、御閉門是非に及ばず、鴻池、米平、    岩城、三井の輩に施行の御談合ありし所、是とても事ならず、大塩    殿には洗心洞の書物を売て施行なせども、中々以て行届かず、明十    九日には堀伊賀守巡見なれば、何れ跡部殿にも同道にて浅岡助之丞    方にて休息なれば、火術を以て鬱憤を晴さん思召、右の用意召れと    の先生よりの御内意で厶り升る 助次郎 委細畏り奉る 淵次郎 済之助殿、某は今宵泊番の義なれば、合図のあれば切て出ん○

大塩噂聞書」
(摘要)















誂(あつ)らへ



厶(ござ)り










折助
(おりすけ)
下男、小者


『演劇脚本大汐噂聞書』目次/その27/その29

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