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造物 二重襖 通り 金襖 大欄間 都て大広間の飾附け
誂らへの鳴物にて道具留る
向ふにて平山助次郎、出仕
〔ト 之助、又兵衛、佐左衛門、弥四郎、善左衛門、手雪洞を持て出
て
之助 合点の行かぬ、平山が夜中の出勤、ソレ何れも
四 人 心得升た
〔ト 花道へ行く、向ふより助次郎出る
之助 平山助次郎、夜中の出仕、合点が行かぬ
弥四郎 胡論な義ならば、我々が
善左衛門 召捕て糺明致す
之助 サア返答は
五 人 何と/\
〔ト 奥にて
山城守 ヤレ待て、方々、聊爾召されな○
〔ト 出て来り
山城守 助次郎、近う/\
助次郎 ハアヽ
〔ト 皆々居直る
山城守 如何に助次郎、夜中の出仕、子細ぞあらん、包まず申せ、何と/\
助次郎 ハアヽ、恐れながら、某義、夜中の出仕も打捨置れぬ一大事故
山城守 何一大事とは
助次郎 則此品
〔ト 願書を出す、山城守、披き見て
山城守 ヤヽ、大塩始め此連名の者共が逆心の企とな
之助 シテ/\子細はナヽ
五 人 何と
助次郎 其逆意の根本は
〔ト 刀を腹へ突込む
山城守 コリヤ、何故の此切腹
又兵衛 血迷ふたるか
五 人 助次郎
助次郎 イヤ血迷ふ抔とは愚か/\○我一旦の義によつて、平八殿の大義
に加はりしが、救民施行の為とは偽り、誠は天下の討手を引受け、
亡主の恨みを散ぜん手立と承つて、拙者が後悔、夫故にこそ、誓を
破り、夜中に出仕致せしは、国の為めなり、民の為、又切腹は大塩
殿へ変心なしたる申訳
山城守 ホヽウ、遖れ出かした、助次郎、其方が変心は、誠に国の礎なり
弥四郎 此上は堀公へ申上げ、人数の手配り、召捕る用意
山城守 いふにや及ぶ、ソレ之助
之助 心得升た
〔ト 向ふへ走り這入る
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「大塩噂聞書」
(摘要)
誂(あつ)らへ
聊爾
(りょうじ)
失礼なこと、
ぶしつけな
こと、軽は
ずみなこと
遖(あっぱ)れ
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