|
山城守 佐左衛門には淵次郎、済之助両人をコレ
〔ト く
佐左衛門 委細畏つて厶り升る
〔ト 下手へ這入る
山城守 助次郎、心置きなく成仏致せ
助次郎 イザ又兵衛殿、御介錯
又兵衛 心得た
〔ト 首を討
山城守 あたら若木を○ソレ死骸取退け
〔ト 二人、死骸を片附け、又兵衛、白衣に首を包み、山城守の前へ置
く、下手にて
佐左衛門 サヽお越し被成
〔ト 佐左衛門、済之助、淵次郎出て
済之助 ハアヽ、思ひ掛けなき夜中の御用
淵次郎 取る物も取敢へず
済之助 出仕仕つて
両 人 厶り升る
山城守 火急の出仕、大義/\、其方共へ討手の役を申附るぞ
両 人 何討手とは
山城守 斯る治世に、君恩を忘れ、反逆企つ大塩平八郎
両 人 何と御意被成升るぞ
山城守 彼に加担の瀬田済之助、小泉淵次郎、ソレ召捕
弥四郎 ハヽア、両人共に
四 人 縄かゝれ
済之助 こは思ひ寄らざる其お詞、元より大塩平八郎、軍学の師なれども、
逆意のあるべき様は厶らぬ
淵次郎 殊に以て、我々を反逆人の加担なりとは覚へなし
山城守 ヤア、いふなしれ者、反逆一味の記せし一書、確と見よ
〔ト 願書を見せる
済之助 ヤヽ、大塩平八郎始め一味の姓名
淵次郎 一々現はす此願書は
山城守 汝等一味の平山助次郎、前非を悔ひ、只今変心
両 人 何が何と
山城守 則彼が此死首
又兵衛 最早遁れぬ国賊共
弥四郎 サア尋常に
四 人 縄にかゝれ
済之助 助次郎、変心致せし上からは
淵次郎 済之助殿、御油断あるな
山城守 ソレ召捕れ
皆 々 ハアヽ
〔ト 色々立廻りあつて、皆々宜しく急度なる返し
|
「大塩噂聞書」
(摘要)
(ささや)く
厶(ござ)り
|