Я[大塩の乱 資料館]Я
2014.10.11

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『演劇脚本大汐噂聞書』
その4

重扇助

中西貞行 1894

◇禁転載◇

二幕目 九條村十作内の場  和州黒闇峠の場 (2)

管理人註
  

八 八 姉御、内にか お 菊 ヲヽ八八さん、何と思ふて厶んしたへ 八 八 おれが来たのは○お菊坊、貴様に用があつて来た、姉御は留守か お 菊 アイ姉さんは 八 八 留守なら幸ひ、爰へござんせ○ハテマアお出いなア○  〔ト 此内向ふより吉五郎出て来り、門口より窺ふ 八 八 コレ、此八八が首たけ惚れて居ればこそ、度々口説に返事もせぬ    は、あんまり難面胴慾な○ 浄るり しがみ附きたる色事師、叶はぬ恋の力業、詮方尽きて見へたる折    ネ、表に立聞く以前の男、ずつと這入て八八が、襟髪掴んでどうと    投附け、娘を囲ふて突立ば、腰をさすつて起上り 八 八 アイタヽヽ○ヤイ終に見なれぬ奴じやが、何でおれを投げたのだ 吉五郎 投げた位は愚な事、首を取ても大事ねへのだ 八 八 こつが/\八八様の首を取つても何で大事ないのだ 吉五郎 ハテ主しある女を手込めにすりやア、いはずと知れた間男故 お 菊 アヽモシ何の私が 吉五郎 アヽコレ合点の悪るい、ソレわしやアこなたの言号ナ○九條村の    十作が妹は、おれが言号、其女をば手込めにする故、間男といつた    が誤りか 八 八 サア夫は 吉五郎 余も言分はあるめへが○ナア女房 浄るり 目ませで知らせば呑込んで、 お 菊 成程、私が言号の殿御で厶んした、余り久しく逢はぬので、ツイ    忘れてのけ升た、堪忍して下さんせ、モシ八八さん、此後否らしい    事しやんしたら、聞く事じやないぞへ 吉五郎 さうとも/\、是にも懲りず口説たら、定法通りわれが骸、二つ    に仕にやアならねへのだ 八 八 エゝ減相な、こんなに長居をしたらどんな目に合ふも知れぬ、ド    レそろ/\出掛けやう○  〔ト 門口へ出て 八 八 然し形りは変つて居れど、今の野郎は慥かに八坂の 吉五郎 ヤ 八 八 イヤ、弥三が所でまん直しに一盃らうか  〔ト 這入る お 菊 是は/\、何れのお方か存じ升ねど、いかひお世話で厶り升た 吉五郎 さうして十作殿は内に居るか お 菊 ハイ兄さんは留守で、姉さんと二人で厶んすわいなア 吉五郎 留守とは幸ひ、一所に来な お 菊 私に来いとは、そりや何所へ 吉五郎 ハテおれが行く所へ連れて往て、女房に仕にやアならねへのだ お 菊 エゝ 吉五郎 たつた今、其方が口から言号だといつたじやアねへか お 菊 今のは八八を欺したのじやわいなア 吉五郎 イヤ欺さうが欺すまいが、こつちは夫を定木にして女房に仕にや    アならねへのだ 鹿 蔵 イヤ一寸待て貰はうかへ  〔ト 奥より出る

大塩噂聞書」
(摘要)

厶(ござ)る










胴慾
思いやりがなく、
むごいこと




















言号
(いいなずけ)
許嫁



























































定木
(じょうぎ)
ものさし


『演劇脚本大汐噂聞書』目次/その3/その5

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