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役人替名
一 宮脇志摩 一 高橋佐左衛門
一 娘お次 一 庄司儀左衛門
一 奥方お勇 一 大塩平八郎
一 忰弓太郎 一 紙屑屋一人
一 下男可助 一 木綿屋一人
一 庄屋杢兵衛 一 捕手大勢
一 八田又兵衛
造物 二重 襖 通り
上手 一間 神前を飾り前へ白絹を掛け、是に吹田大明神と書あり、
此前に荒菰を敷き、三宝に神酒を供へあり、二重の欄間に七五三縄を
張りあり
上手 落間 屋敷塀 鳥居 玉垣
下手 屋敷塀 例の所代官門、是にも七五三縄を張り、都て神主宅の
飾附け、門の柱に宮脇志摩の表札をかけ、上手の平舞台に大きなる石
台に松の木植あり、早き合方早太鼓を打交せたる鳴物にて、道具留る
〔ト 下手より紙屑屋、荷をかつぎ出て来り
紙屑屋 屑は厶い、屑は○
〔ト 内を窺ひ居る、向ふより木綿屋出て来り居直る
紙屑屋 軍八殿
木綿屋 八平殿
紙屑屋 シテ大塩始め妻子の者の手掛りは厶つたか
木綿屋 左ればで厶る、我々斯く姿を扮し、此辺りを徘徊致すも、彼等が
有家を探らん為
紙屑屋 如何にも当家は大塩が伯父で厶れば、日毎に参つて窺ふ所、何で
もかくまいあるに相違は厶らぬ
木綿屋 スリヤ弥々此家の内に
紙屑屋 手前は是より高橋、八田の御両所へお知らせ申せば其許には今一
応白井が宅を窺ひ召れ
木綿屋 如何にも左様仕らん
両 人 お別れ申す
紙屑屋 屑い、屑は厶ざい/\
〔ト 紙屑屋は向ふへ、木綿屋は下手へ這入る、志摩、出て来り、門口
を窺ひ、押入の戸を明ける、内よりお勇、弓太郎の手を捕り、跡より
お次出て来り
お勇・お次 伯父様
志 摩 アコレ○静かにさつしやれ、然しながら如何に世を忍ぶ身とは申
ながら、戸棚の住居も嘸窮屈で厶らうのう
お 勇 何のマア、勿体ない事おつしやり升せ、日外騒動の砌りより、親
子三人御厄介、如何に縁者とはいひながら、此御恩斗りは死んでも
忘れは
両 人 致し升せぬわいなア
志 摩 是はしたり、又しても其様な事斗り、然し気の毒なは平八郎殿、
下も/\の難義をば救はん為に仕た事なれど、天下の法とて詮議の
厳しさ、然し追々薄らがう程に、先当分足を留めたがよい
お 勇 お嬉しい其お詞、夫に附ても、夫には何所にお忍び被成るゝやら
お 次 我身の上より父の身の上、お案じ申升るわいなア
志 摩 何の/\、元より発明な平八郎、天下の科人とは申ながら、人の
為に仕た事なれば、其所は天のお恵でも、其身に凶事はない程に、
気を落附て居たがよい○然しながら今の今迄、人も恐れし大塩の
お 勇 如何に浮世といひながら
お次・志摩 思へば果敢ない
三 人 成行じやなア
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「大塩噂聞書」
(摘要)
落間
(おちま)
平土間
厶(ござ)い
果敢(はか)ない
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