Я[大塩の乱 資料館]Я
2014.10.14/10.25最新

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「大塩の乱関係論文集」目次


『演劇脚本大汐噂聞書』
その7

重扇助

中西貞行 1894

◇禁転載◇

二幕目 九條村十作内の場  和州黒闇峠の場 (5)

管理人註
  

鹿 蔵 矢ツ張り爰の女の一條、あのお菊はどうあつても、おれが女房に    貰ふ程に、さう思ふて貰はうかい 吉五郎 其事なればならねへのだ 鹿 蔵 うんなら爰で二人の 吉五郎 力較らべが 両 人 互の運づく○サア/\/\ 鹿 蔵 寧そ斯うして 吉五郎 エゝ面倒な 浄るり 振切る手先かいつかみ、すつくと立つたる二人が有様、挑み争ふ    龍虎の勢ひ  〔ト 色々あつて鹿蔵尻餅を搗いて 鹿 蔵 待て/\  〔ト 切戸の柱を引抜き、投てやると、吉五郎受る、又一本抜て、是に   て色々立廻あつて、鹿蔵の柱を叩落し 吉五郎 寧その事に  〔ト 息込むを 鹿 蔵 待てくれ/\○とほうもない力じやなア、モウ誤たが、何と今か    らこなさんの仲間にして下んせぬか 吉五郎 何、仲間とは 鹿 蔵 ハテ、いはずと知れたくら商売、何も隠す事はない、昼は馬追、    夜るはよつぴと働らいたら、こなたの片腕にもなる男、どうぞ仲間    にして貰ひたい 吉五郎 面白い、さう心が極つたら、先から先は兄弟同様 鹿 蔵 互ひに危い場に臨めば 吉五郎 命を限り救ふのがおれの仲間の、是が掟 鹿 蔵 さうしてこなたの名は何と 吉五郎 此居廻りの国々を仕事場にする、幻の吉五郎といふ野郎よ 鹿 蔵 そんなら兼々噂に聞た幻どんとは、こなたであつたか  〔ト 奥よりお慶出掛け、聞て居て お 慶 其名前を聞からは、今こそ嫁入らす妹お菊、サア受取て下さんせ  〔ト 帛紗包を渡す、吉五郎聞き見て 吉五郎 ヤヽ是こそ望みの家の系図○此一巻を所持するからは お 慶 こなたの姉じやわいのう 吉五郎 ヤヽヽヽ○ 浄るり 驚く内に持たる懐剣、喉へぐつと突立れば 吉五郎 ヤヽ、何故あつて 両 人 此生害 お 慶 此身の自害は、鹿蔵殿へ嫁入らす妹 鹿 蔵 何といはつしやる お 慶 此中から私の内へ妹にかこ附け厶るのは、何ぞ望が有ての事、今    日といふ今日、合点がいた、若しや弟を私の内にかくまふてあらう    かと、探らん為の心であらう、サア、さう見た故の此自害、是をお    前の功にして、此場は此儘見遁がして 鹿 蔵 驚入つたる姉御の眼力、如何にも拙者は吉五郎が実否を糺さんと    入込しが、今こなたがせつなる最期、まつた吉五郎が力を試し、一    旦手下に組せしならば、何しに今更変ぜんや 吉五郎 其心底を見る上は、是より浪華へ赴かん 鹿 蔵 おれは其儘馬追にて、別れ/\に何角の手つがひ お 慶 妹は縁切り、兼て訳ある同村の五郎作へ嫁入したれば、あれが身    の上気使ひない、アヽモウ目が見へぬ、左らば/\ 浄るり 床しい父母、恋しい夫、長い未来で逢見んと、いふが此世の断末    魔 両 人 南無阿弥陀仏  〔ト 五郎作、八八出て 五郎作、八 八 様子は聞た注進する  〔ト 行かけるを引戻す、お慶落入る 鹿 蔵 こいつ等二人は姉御の追善 吉五郎 生けて返へすな 鹿 蔵 合点だ   〔ト 鹿蔵、五郎作を締上げ、吉五郎、八八を切る、是を早い太鼓にな   り 吉五郎 ふけれ 鹿 蔵 ヲヽイ  〔ト 五郎作を投げる吉五郎、刀を拭が木の頭、両人宜しく浅黄幕を冠   せる返し

大塩噂聞書」
(摘要)











寧(いつ)そ















































































厶(ござ)る



















































木の頭
(きのかしら)
幕切れの台詞や
動作のきまりに
合わせて打つ拍
子木の最初の音


『演劇脚本大汐噂聞書』目次/その6/その8

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