役人替名
一 内山彦次郎 一 坂本之助
一 馬士鹿蔵 一 八田又兵衛
実は若党三平 一 高橋佐左衛門
一 小泉淵次郎 一 弓削新左衛門
一 近藤梶五郎 一 小頭城内
一 平山助次郎 一 大岡紀伊守
一 木村司馬之助 実は幻の吉五郎
一 庄司儀左衛門 一 大塩平八郎
一 渡辺良左衛門 一 三好屋五郎兵衛
一 湯川氏太郎 一 堀伊賀守
一 清水善之助 一 堀内仁兵衛
一 萩原弥九郎 一 手代一人
一 内山妹小菊 一 侍二人
一 幸左衛門妹美羽 一 行列大勢
一 弥九郎妹若竹 一 供廻大勢
一 九郎右衛門娘綾葉 一 盗賊一人
一 儀左衛門娘松ケ枝 一 四ケ所二人
一 大塩娘お次 一 触込一人
造物 二重金襖 大欄間 都て大広間の飾附
二重に大岡紀伊守高相引にかゝり、堀伊賀守居る平舞台に弓削新左衛
門、之助、良左衛門、又兵衛、佐左衛門、弥九郎居る、
時太鼓にて幕開く
伊賀守 此度、鎌倉殿より御上使とあつて、大岡紀伊守様
新左衛門 遠路の所御苦労の御発駕
伊賀守 某こそは当国を領り奉る堀伊賀守
新左衛門 家老弓削新左衛門
之助 坂本之助
梶五郎 近藤梶五郎
弥九郎 萩原弥九郎
新左衛門 お見知り置れ
皆 々 被下升せう
紀伊守 何れも方にはお迎ひ太義にこそあれ
伊賀守 何卒御上使の趣、仰聞られ升せうならば
皆 々 有難う存じ升る
紀伊守 上使の趣、承はられよ○当将軍家六十余州の重器/\を召寄せて
見分あらんとの思召に因て、諸国へ夫々に使者を以て催促に及ぶ、
当国錦城に納め置く所の勝時丸の短刀、其以前、今川家の重宝なれ
ども、織田家へ渡り、秀吉是を愛し、夫より当家へ譲し故、当錦城
へ秘め置かるゝ由、急き受取帰れとの上意、其意承知致してよから
う
伊賀守 ハアヽ、委細承知奉る、去りながら、合役たる跡部山城守、病中
にて引籠りおり升れば、某一了簡には計ひ難し、何卒暫時御猶予の
義をは
紀伊守 ヤア、麁忽なり、伊賀守、山城守本復迄うか/\相待たうや○アヽ
聞へた、勝時丸紛失故、病気に事寄せ、延引致さす所存よな
之助 ヤア、御上使の仰せとも覚へず、斯く名城の宝蔵へ秘め置きたる
御宝を、仮令如何なる盗賊たりとも盗取ること、思ひも寄らず
梶五郎 殊に御宝蔵の鍵預りは大塩、内山御両所なれば、麁相のあるべき
様は厶らぬ
紀伊守 ヤア、紛失致さぬが実正なれば、イザ勝時丸、受取らうや
伊賀守 サア其義は
紀伊守 但し紛失致しておるか
皆 々 サア/\/\
紀伊守 方々返事ナヽ何と
〔ト 向ふより
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