定番の応援
を請ふ
大阪城守備
の職制
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東町奉行所では漸く淵次郎を斬倒したが途に済之助を逸した、平
八郎と刺交へて死ねと命じた大西与五郎は其儘帰つて来ぬ、兎角
する中天満では大筒小筒の音が烈敷聞え、火は盛に各所より燃上
り、両組から出した捕手の人数ハ到底近寄れぬといつて帰つて来
る、其処で両奉行ハ鉄砲奉行石渡彦太夫同御手洗伊右衛門に掛合
ひ、鉄砲同心を借りて打払うとしたが、両鉄砲奉行配下の同心は
各々二十名、合計四十名に過ぎず、充分の兵力といへぬので、玉
造口定番遠藤但馬守胤統へ宛てゝ加勢出願に及んだ。
抑も大阪城守備の首将となるべきは城代で、京橋口玉造口両定番、
山里丸・中小屋・青屋口・雁木坂の四加番、並に東西の大番組は
各々一方面の防禦を担任し、御目付・破損奉行・具足奉行・弓奉
行・鉄砲奉行・金奉行・蔵奉行等があつて職名の如き役々を勤め、
別に川口に船手奉行といつて水軍を掌る奉行がゐる、孰れも幕府
の任命派遣にかゝる者であるが、其中大番組は東西両組で都合百
騎、之に組与力廿騎同心四拾人を加へ、大番頭両名にて支配し、
四加番と同じく毎年八月に交代し、又御目付は毎年九月六日に交
代し、其他は交代年月が一定して居らぬ、両定番の配下には地付
与力各々三拾騎同心百人、船手奉行の配下には同与力拾騎・同心
二拾人・水主五拾人、又各奉行の配下には若干の同心又は手代が
ある、地附とは土着の意味で、町奉行付与力同心と同じく、表向
は御番代を申付らるゝことになつて居るが、其実は世襲であつた、
両定番組の与力には同心支配が三名宛、御蔵目付・御蔵目付加人・
欠所・破損・塩噌・御石・小買物が一名宛あつて、是等の役を勤
ヒラ
めぬ与力を平与力といふ、大塩乱当時の城代以下重立ちたる面々
の氏名・居城・石高・任命年月等は左の如くである。
城代 土井大炊頭利位 居城下総葛飾郡古河 八万石
天保五年三月より
京橋口定番 米倉丹後守昌寿 在所武蔵久良岐郡金沢
壱万弐千石 天保七年十一月より 但し未着
玉造口定番 遠藤但馬守胤統 在所近江野洲郡三上 壱万石
天保四年三月より
大番頭(東小屋) 管沼織部正定志 在所三河新城 七千石
大番頭(西小屋)北條遠江守氏喬 在所河内丹南郡狭山 一万石
山里丸加番 土井能登守利忠 居城越前大野郡大野 四万石
中小屋加番 井伊右京亮直経 居城越後三島郡与板 二万石
マサヨシ ナガトロ
青屋口加番 米津伊勢守政懿 在所出羽村山郡長瀞 壱万千石
アンシ
雁木坂加番 小笠原信濃守長武 在所播磨宍粟郡安志 壱万石
御目付 中川半左衛門 二千六百七拾四石
御目付 犬塚太郎左衛門 七百石
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東町奉行所では漸く淵次郎を斬倒したが途に済之助を逸した。
平八郎と刺交へて死ねと命じた大西与五郎は帰つて来ぬ。兎角す
る中天満では大筒小筒の音が烈敷聞え、火は盛んに各所から燃上
り、捕手の人数は到底近寄れぬといつて帰つて来る。山城守は徒
党鎮定よりも、東町奉行所の防備に腐心し、伊賀守連名で、鉄砲
奉行石渡彦太夫同御手洗伊右衛門に掛合ひ、鉄砲同心を借りたが、
鉄砲奉行配下の同心は各々二十名、合計四十名に過ぎず、十分の
兵力といへぬので、更に玉造口定番遠藤但馬守胤統へ宛て加勢依
頼に及んだ。
抑も大阪城守備の首将となるべきは城代で、京橋口玉造口両定番、
山里丸・中小屋・青屋口・雁木坂の四加番、並びに東西の大番組
は各々一方面の防禦を担任し、御目付・破損奉行・具足奉行・弓
奉行・鉄砲奉行・金奉行・蔵奉行等があつて職名の如き役々を勤
め、別に川口に船手奉行といつて水軍を掌る奉行がゐる。孰れも
幕府の任命派遣にかゝる者であるが、大番組は東西両組で都合百
騎、之に組与力二拾騎同心四拾人を加へ、大番頭両名にて支配し
四加番と同じく毎年八月に交代し、御目付は毎年九月六日に交代
し、その他は交代年月が一定して居らぬ。両定番の配下には地付
与力各々三拾騎同心百人、船手奉行の配下には同与力拾騎・同心
二拾人・水主五拾人、又各奉行の配下には若干の同心又は手代が
ある。地付とは土着の意味で、町奉行付与力同心と同じく、表向
は番代を申付らるゝことになつて居るが、実は世襲であつた。両
定番組の与力には同心支配が三名宛・御蔵目付・御蔵目付加人・
闕所・破損・塩噌・御石・小買物が一名宛あつて、是等の役を勤
ヒラ
めぬ与力を平与力といふ。大塩乱当時の城代以下重立つた面々の
氏名・居城・石高・任命年月等は左の如くである。
トシツラ
城代 土井大炊頭利位 居城下総葛飾郡古河 八万石 天保五年三月より
マサナガ
京橋口定番 米倉丹後守昌寿 在所武蔵久良岐郡金沢 壱万弐千石 天保七年十一月より但し未着
タネノリ
玉造口定番 遠藤但馬守胤統 在所近江野洲郡三上 壱万石 天保四年三月より
大番頭(東小屋) 管沼織部正定志 在所三河新城 七千石
大番頭(西小屋) 北條遠江守氏喬 在所河内丹南郡狭山 壱万石
山里丸加番 土井能登守利忠 居城越前大野郡大野 四万石
中小屋加番 井伊右京亮直経 居城越後三島郡与板 二万石
マサヨシ ナガトロ
青屋口加番 米津伊勢守政懿 在所出羽村山郡長瀞 壱万千石
アンシ
雁木坂加番 小笠原信濃守長武 在所播磨宍粟郡安志 壱万石
御目付 中川半左衛門 二千六百七拾四石
御目付 犬塚太郎左衛門 七百石
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