廿日依鎮火










延焼と区域
其損害

兵火は八方に起り、火消人足は恐れて近寄らず、山城守は一旦城
入の後夕七ッ時過火事場へ出馬する事に決し、鉉之助等は一同馬
先を守り、所々にて消防の差図に及んだが、火消人足の無勢と疲
労とにより、火は次第に東に延焼し、谷町筋にて喰止めんとした
甲斐なく、六ッ半時頃池田岩之丞預の谷町代官所を焼払ひ、廿日
夜五ッ半時過を以て鎮火した、天満に於ては川崎より堀川まで、
船場上町に於ては、東は弓町より西は中橋筋に至り、北は大川よ
り南は内本町筋に至るまで一円に焼失し、東西最も広き所七百六
拾五間、南北最も広き所千拾間あり、焼失町数は天満組四拾弐町・
北組五拾九町・南組拾壱町に及び、附属地六ケ所及川崎村の一部
も亦焼亡し、家数合計三千三壱百八拾九軒・竈数一万二千五百七
拾八軒・明借屋千三百六軒・土蔵四百拾壱ケ所・穴蔵百三ケ所・
納屋二百三拾ケ所・寺拾四ケ所・道場弐拾弐ケ所・社三ケ所・神
主並社家屋敷十軒、屋敷弐ケ所・蔵屋敷五ケ所・用場弐ケ所、銀
座・秤座・天満組惣倉所・牢屋敷、公儀橋二ケ所（天神橋高麗橋）、
町橋三ケ析（葭屋橋・今橋・平野橋）、東本願寺天満掛所・興正
寺掛所、三町人山村与助居宅・同尼崎又右衛門居宅、破損奉行鈴
木栄助役宅・代官池田岩之丞役宅・跡部山城守組与力屋敷弐拾九
軒・同組同心屋敷四拾六軒、堀伊賀守組与力屋敷弐拾九軒・同組
同心屋敷弐拾六軒・右組与力武術稽古場三ケ所、鉄砲奉行御手洗
伊右衛門組同心屋敷拾軒・御弓奉行上田五兵衛同鈴木次左衛門組
同心屋敷拾七軒・弦指糟谷遠江居宅・破損奉行森左十郎同榊原太
郎右衛門組手代屋敷拾軒を烏有に帰せしめた。

　兵火は八方に起り、火消人足は恐れて近寄らず、山城守は一旦
城入の後夕七ッ時過火事場へ出馬する事に決し、鉉之助等は一同
馬先を守り、所々にて消防の差図に及んだが、火消人足の無勢と
疲労とにより、火は次第に東に延焼し、谷町筋にて喰止めんとし
た甲斐なく、六ッ半時頃池田岩之丞預の谷町代官所を焼払ひ、二
十日夜五ッ半時過を以て鎮火した。天満においては川崎より堀川
まで、船場上町に於ては、東は弓町より西は中橋筋に至り、北は
大川より南は内本町筋に至るまで一円に焼失し、東西最も広き所
七百六拾五間、南北最も広き所千拾間あり、焼失町数は天満組四
拾弐町・北組五拾九町・南組拾壱町に及び、附属地六ケ所及び川
崎村の一部も亦焼亡し、家数合計三千三壱百八拾九軒・竈数壱万
二千五百七拾八軒・明借屋千三百六軒、土蔵四百拾壱ケ所・穴蔵
百三ケ所・納屋二百三拾ケ所、寺拾四ケ所・道場弐拾弐ケ所・社
三ケ所・神主並びに社家屋敷十軒、屋敷弐ケ所・蔵屋敷五ケ所・
用場弐ケ所、銀座・秤座・天満組惣倉所・牢屋敷、公儀橋二ケ所
（天神橋高麗橋）、町橋三ケ析（葭屋橋・今橋・平野橋）、東本
願寺天満掛所・興正寺掛所、三町人山村与助居宅・同尼崎又右衛
門居宅、破損奉行鈴木栄助役宅・代官池田岩之丞役宅、跡部山城
守組与力屋敷弐拾九軒・同組同心屋敷四拾六軒、堀伊賀守組与力
屋敷弐拾九軒・同組同心屋敷弐拾六軒・右組与力武術稽古場三ケ
所、鉄砲奉行御手洗伊右衛門組同心屋敷拾軒・御弓奉行上田五兵
衛同鈴木次左衛門組同心屋敷拾七軒・弦指糟谷遠江居宅・破損奉
行森左十郎同榊原太郎右衛門組手代屋敷拾軒を烏有に帰せしめた。