Я[大塩の乱 資料館]Я
2005.11.28

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「大塩の乱関係論文集」目次


『大 塩 平 八 郎 』 その67

幸田成友著(1873〜1954)

東亜堂書房 1910

◇禁転載◇


 第二章 学者
  三 学説 (4)
 改 訂 版


一死生  

太虚は常住不滅である、人若し私欲に打勝つて太虚に帰すれば、 不生又不滅となり、形骸は滅んでも心は死なない、心の死なない ことを知れば、百千の危難も敢へて恐るヽに足らぬ、之を天命を 知る者と称し、其生命は天地と無窮を争ふのであるが、常人は徒 に天地の無窮なるを視て吾を暫時のものとなし、血気の壮時に我 慾を恣にして額に年波の寄るを憂ひ、身の死するを恨んで心の死 するを恨まない。「英傑大事に当り、固より禍福生死を忘る、而 して事適々成れば、則ち亦禍福生死に惑ふ、学問精熟の君子に至 りては則ち一なり、生を求めて仁を害すること無し、夫れ生は滅 あり、仁は太虚の徳にして万古不滅のものなり、万古不滅のもの を舎てゝ、而して滅することあるものを守るは惑へるなり、故に 志士仁人彼を舎てゝ此を取る、誠に理あるかな、常人の知る所に 非ざるなり」との言は、彼が荻野四郎助に与へた書中附録(一五) の一節と符合する所がある。

 太虚は常住不滅である。人若し私欲に打勝つて太虚に帰すれば、 不生又不滅となり、形骸は滅んでも心は死なない、心の死なない ことを知れば、百千の危難を敢へて恐るヽに足らぬ。之を天命を 知る者と称し、その生命は天地と無窮を争ふのであるが、常人は 徒に天地の無窮なるを視て、吾を暫時のものとなし、血気の壮時 に我慾を恣にして額に年波の寄るを憂ひ、身の死するを恨んで心 の死するを恨まない。「英傑大事に当り、固より禍福生死を忘る、 而して事適々成れば、則ち亦禍福生死に惑ふ。学問精熟の君子に 至りては則ち一なり、生を求めて仁を害すること無し。夫れ生は 滅あり。仁は太虚の徳にして万古不滅のものなり。万古不滅のも のを舎てゝ、而して滅することあるものを守るは惑へるなり。故 に志士仁人彼を舎てゝ此を取る、誠に理あるかな。常人の知る所 に非ざるなり」との言は、彼が荻野四郎助に与へた書中附録(四) の一節と符合する所がある。


井上哲次郎「大塩中斎」 その26


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