Я[大塩の乱 資料館]Я
2009.4.11

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「大塩の乱関係論文集」目次


『江戸と大阪』
その28

幸田成友著(1873〜1954)

冨山房 1942 増補版

◇禁転載◇


 第二 市 制 (8)管理人註

江戸の名主 と大阪の町 年寄 月行事持 組合持 町年寄の選 挙

 江戸の名主は大阪の町年寄に匹敵する。但し大阪の町年寄は毎 町一人が通例であるが、江戸の名主は一人で二三ケ町乃至十数町 を支配してゐる。それ故江戸の町数は大阪の殆ど三倍でありなが ら、名主の総数は多い時で二百五六十人に過ぎない。江戸では名 主支配の町々の外月行事持の町々がある。名主を置かずに月行事 で支配する。即ちその町内に住む町人が代る\/行事になつて町 内の世話をする。畢竟名主に支払ふ給料を節約する意味から出た もので、大抵町外れの小町に見る所です。また組合持といふもの もある。これほ元来名主があつたところ、それが退転して差当り 跡を襲ぐものが無い時、組合の名主共で支配するのです。  名主は世襲ですが、町年寄は選挙によつて定められる。選挙権 はその町の町人即ち家屋敷を所有して居るものに限る。家屋敷を 持つて居らぬものは何等の権利も無ければ、何等の義務も無い。 尚この事については後文に委しく説明しませう。町年寄の選挙に 際し、一人で二票づゝ投じた場合があるが、通例は一票です。選 挙がすむと投票の結果を月行事からその組の惣会所に報告する。 報告には票数の順位により大抵三人を挙げて候補者とし、本人の 氏名・住所・生年は勿論、職業・財産・在住の年数等に至るまで 精細に書立て、高点中何人に町年寄を命ぜらるゝも一切苦情なし と結び、町人連印で惣会所に出す。惣会所では四隣の町年寄に、 今度何町の年寄が闕けたが、何人を後任者に挙げたがよいか遠慮 なく申出でよと命じ、四隣の町々は之に応じて銘々書上をする。 それから惣会所から高点者一同に出頭を命じ、惣年寄が応対をし            ヒトガラミ て人物を試めす、これを人柄見と申しますが、それに及第したも のが惣年寄から町奉行に申達せられ、そこで始めて町年寄が決定 する。随分念の入つたものです。いよ\/町年寄に任命せられる と、早速惣会所に宛てゝ町々の事務を依怙偏頗なく取扱ふといふ 誓書を出し、引続いて御目見のため町奉行所へ出頭したり、天満 御屋敷方へ挨拶に廻つたり、忽忙の中に数日を費します。

依怙偏頗
えこへんば




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