Я[大塩の乱 資料館]Я
2009.4.22

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「大塩の乱関係論文集」目次


『江戸と大阪』
その39

幸田成友著(1873〜1954)

冨山房 1942 増補版

◇禁転載◇


 第二 市 制 (19)管理人註

大阪の町役 その他の賦 課法 江戸の町入 用 その賦課法

 大阪の町役は純粋にその町の入用で定式と臨時とに分ける。費 目の種類を区別すると、(一)諸寺社への初穂料、(二)町奉行 以下町奉行所役人、惣年寄以下惣会所役人に対する礼銀心付、 (三)惣代扶持銀、(四)町年寄以下町会所役人に対する礼銀・ 給料・心付、(五)組合諸入費、(六)諸帳簿・薪・炭・油その 他諸雑費、(七)水道浚賃、(八)橋梁改架・修繕・掃除費等と なります。その賦課法には役割・顔割・坪割・間口割の四種があ る。水道浚賃は坪割、橋梁に関する諸経費は間口割、一年二回町 年寄へ贈る祝儀銀は顔割、即ち町人の頭数に応じて割付けたので すが、何といつても役割が一番広く用ひられた。町会所では一年 を六節季に分け、節季毎に公役町役の費目銀額を掲げ、町人一人 毎の負担額を明記し、月行事の連名で節季末までに集銀する仕来 りでした。それから惣会所で公役銀を計算賦課する時は、月番町 の町年寄若干名が立合つてそれを承認することになつてゐますが、 惣会所の計算に不正があるといつて大紛議を起した例があります。  江戸では大阪の公役町役に当るものを引括めて町入用といひ、 定式臨時の二つに分れる。定式の分には公役銀・御年頭銀・町年 寄晦日銭・名主役料・水銀・上水方普請割方・鐘役・大纏当番・ 鳶人足捨銭・同木綿法被半天股引・町内書役・櫓番・木戸番・自 身番入用・芥取捨銭、臨時の分には纏修復龍吐水等・祭礼入用・ 番屋修復畳替・請勧化並捨物倒もの等・道造入用等がある。江戸 では火災・水道・祭礼を地主の三厄といひ、失費に苦しんだとい ふが、成る程前記の費目中消防に関する分が数項ある。大阪で水 道といへば下水道のことであるが、江戸には玉川上水と神田上水 とがある。水銀といふのは上水飲用料、上水方普請割方といふの は水道の樋や枡を普請修繕する費用で、水銀は町方は小間に応じ、 武家方は石高に応じて出しますが、普請金は割付方が甚だ複雉で す。祭礼は山王神田を第一として非常にはずんだ。祭礼の年には ツケマツリ 附祭があるし、祭礼の無い年には陰祭がある。女房子を売飛ばす といふのは借家裏店住居の人々のこと、紋付に小紋の麻上下で警 固に出る地主の側は、祭礼の費用一切を負担するのですから、一 時の支出を迷惑とし、祭礼講を立て祭礼の入費を積んで置く町々 さへあつた程です。  町入用の賦課法は寛政以前は小間割・坪割・面割地別、軒別割 家別等に分れたが、寛政に至つてすべて小間割となつた。勘定の 仕方は月行事が自身番へ出て自分で遣るのが本式ですが、実際は 書役がして月行事はたゞ印を押した。大阪と違つて毎月勘定です。

 


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