Я[大塩の乱 資料館]Я
2009.6.7

玄関へ

「大塩の乱関係論文集」目次


『江戸と大阪』
その59

幸田成友著(1873〜1954)

冨山房 1942 増補版

◇禁転載◇


 第三 市内の交通
  二 川 筋 (7)
管理人註

船持共川船 奉行を告訴 す

 前述の如く鶴飛騨の身分は御作事方棟梁であつた。併し川船奉 行といふ所で権威を振ふ。享保十九年五月船持のゐる町々百十四 人の名主が、川船奉行の権威ケ間敷取扱に反対して長文の願書を 大岡越前守の役所へ差出した。尤も彼等はその願書を差出すまで に度々寄合ひ、衆議の上、右百十四人の内四人が総代となつて十 五日に願書を差出し、越前守から色々質問をうけ、改めて十八日 に差出した。その内に、  (一)正徳三年八月から新船・上ケ極印・売買船の証文等は家     主加判名主奥印にて提出することゝなつてゐる。然るに     近年は文言度々御書直し、船持共数度出頭を余儀なくせ     られ、難儀至極である。  (二)船持共年貢上納延期する際、家主・五人組・名主共々罷     出づべき旨の差紙を附せられる。名主御用多にて名代を     差出せば、御番所へは名代を差出すとも、この方へは本     人罷出づべしと伝へらる。  (三)不参を落度とし差紙を遣はさる。  (四)何事も手代衆ばかりの御取計なれば、船持共疑惑する。     先規は名主が呼出されることは無かつた。  (五)櫓櫂取上は不法といふべし。  (六)川船御役所よりの廻状を差紙と唱へ、差紙に対する受取     を要求する。  (七)従来は御年貢を上納すれば、直ちに船手形を交附された     所、近年は延期上納の分は追つて名主呼出しの上手形を     渡さる。故に船持共の難儀となる。  (八)名主が他国行の節代判を許さず、隣町名主を呼出し請合     印形を為さしむ。  (九)年貢役銀上納の節、銀相場町々の相場と相違す。自今は    年貢御請取札に役銀何程此銭何程と記入せられたい。  (一〇)船持共御役所へまゐる節、手代共の言語法外なり。  (一一)深川扇橋浅草橋場の川船御年貢請取手形改場にて、舟     に乗り往来するものゝ頭巾笠をとらせ、病人にて臥り居     るものをも起す。

 


「江戸と大阪」目次/その58/その60

「大塩の乱関係論文集」目次

玄関へ