| ○大坂騒動 (１１) |
大坂町奉行堀伊賀守家来より差越候書状
二月十七日、山城守殿組同心平山助次郎封書を以、組与力同心及徒党候旨、山城守殿へ申立、同日出奔、翌十八日御同人伊賀守殿ヘ、右之次第談に付、早速手当可然趣及答候処、山城守殿格別大変共不被存見合候処、伊賀守には不審の事に被思、組与力吉田勝右衛門召呼、実正為札候処、何様の企共不分明の段申立、夜四ツ時過に再応勝右衝門召呼、可相糺旨被申付、深更に及び八ツ時頃、山城守殿組同心九郎右衛門忰吉見英太郎、并郷左衛門忰河合八十次郎両人、伊賀守役所中の口へ罷出、申立候儀有之候に付、子細不相分候へども、旅の用意にて羅越、火急の趣申立候由を申込に付、泊番へ通じ、其夜当番中泉撰司、下山弥右衛門罷出、撰司儀委細申立候趣承り候処、大変の次第内訴状、并檄文添差出、明十九日両奉行巡見、天満組屋敷へ被相越候節、火箭并大筒小筒の鉄炮にて、打すくめ可申趣の巧みに候旨申之に付、右内訴状檄文共伊賀守へ差出、委細申聞、依て松本嘉藤太出勤、吉田勝右衛門召呼、列座にて伊賀守直に右両人被相糺候処、前に申立候通相違無之、然る上は徒党の者共召捕方手当、今晩中に可致旨、吉田勝右衛門へ被申付、山城守殿へ右内訴状檄文共持参、嘉藤太使者に罷越、両組共一手にいたし、即刻召捕可申旨手筈示合罷帰、吉田勝右衛門儀は、天満組屋敷へ罷帰、早速組中勝右衛門宅へ参り候様触候に付、与力同心不残相集り候得共、山城守殿組一人も不相見候間、為相糺候処、役所より用向有之趣にて呼上、在宿の者一人も無之、依ては手筈相違に相成、山城守殿差図の程も難計、殊に一組にては人少の事故、組一統伊賀守御役所へ参集可然旨、追々相詰候処、山城守殿より使を以、伊賀守早速東御役所へ被相越候様申来候に付、火急の事に付、早速支度罷越、跡より火事具用意致し、用人有賀順平、祐筆平田又兵衛、其外伊賀守供不足の分、不残東御役所へ相詰候処、伊賀守より松本嘉藤太にも罷越候様申来候間、即刻罷出、猶又使を以、同心鉄炮共二十五人貸呉候様、東御役所より申越、西御役所手薄に相成候へども、任其意人数遣し候内時刻移り、朝五ツ時頃に相成、
然る処前夜山城守殿御役所勤番泊り、与力瀬田済之助、小泉淵次郎罷在候処、嘉藤太談し済帰り候跡にて、右両人の与力、山城守殿用談の間へ被召呼、子細被相糺候に付、瀬田済之助は急場を抜、塀を乗越逃去、手当無之に付、右の始末に相成、依之大塩平八郎父子へ申聞候哉、即刻右平八郎居宅へ火を掛、火矢大筒等の手配、組屋敷家々ヘ火箭大筒を打掛け、一統燃上り、夫より追々天満市中へ張出、天満一円燃立、天満橋天神橋へ繰出し候処、天満橋には山城守殿差図に付、京橋口関所の組同心相固め候間、右橋渡り兼候に付、難波橋へ押懸、追々火箭打掛、鴻池善右衛門(方脱カ)にて、金子奪取べき巧と相見、火矢を打掛、徒党の者共込入及乱妨候上、平野橋へ繰出し、火箭大筒等厳敷打掛々々、既に内平野橋へ押出候処、東御役所追々手近く相見候に付、伊賀守早速可打出旨申候へども猶予に付、伊賀守全く手勢計にて、東御役所横通辺へ押出候へども、鉄炮無之防方無之、見合居候処、山城守殿より頼申入、玉造口組同心召連、御同人御出馬に付、右同心の内十二人引分、山城守殿にも同心十四五人召連、両替町にて二手に別れ、伊賀守には内平野町へ打出候処、徒党の者共先手へ押掛り、鉄炮打合候て厳敷押詰候に付、賊党共平野橋へ引上逃帰り、山城守殿両替町より平野橋へ被向候趣に付、伊賀守追捨にいたし、西御役所并牢屋敷の安否を可為見届、松屋町通押来候処、右両人(所？)共別條無之に付押渡し、徒党の者共先手へ可相廻と火急に押行、淡路町堺筋へ打出候処、賊党共火箭并大筒小筒打散し、相働候先手へ押掛け、鉄炮厳敷打掛候処、山城守殿にも賊党の跡より押詰候に付、前後の敵に賊党進退自由不成処、玉造口組同心土岐熊次*1、賊方火術の棟梁を打留首を取、引続鉄炮数十挺打掛押詰候に付、賊党総崩れと相成、船場一円煙の中の戦に付、追詰可打取と心を配候へども、右賊党の棟梁五人、何方へ逃去候哉更に行衛不相知内、次第に火勢強相成、依之賊党共武器其外打捨又は取落し、逃去候者数を不知、
依而両奉行又々二手になり、所々見廻り候へども、不審成者無之処、内平野町之火勢強、殊に淡路町辺一円火中に付、一先消防に差掛り可申と、伊賀守人数引上、本町橋相渡、追手東御役所牢屋鋪、内平野町辺へ消防の人数厳敷差図いたし、平野橋思案橋は火煙の中に付固め無之、本町橋には玉造口京橋口組同心、鉄炮にて固め候所に、消防行届鎮火候場所有之、