良吏の儀
範、循吏
の標幟
一代の木
鐸道学の
柱礎
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○良吏の儀範、循吏の標幟○一代の木鐸道学の柱礎○近藤守重と大塩平
八○英雄老と英雄漢○秋鷹 に繋かれ龍馬桟豆に伏す○平八守重に別る
平八郎は、既に文化九年、齢十九を以つて、大坂町奉行組与力として、吏務
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に鞅掌し、刀筆に従事せり、勤勉精励廉直を以つて居り、公平を以て持す、
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獄を析し訟を聴く、敢為にして果決明截にして神速、迅雷耳を掩ふに あら
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ざる如きものあり、明鏡直に肝胆を照らすが如きものあり、而して循良に、
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而して謙遜に、渠れは夙とに良吏たり、循吏たるの儀範となり、標幟となれ
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り、而かも其の狷介傲岸なる噐宇と、豪悍桀驚の気骨とは、掩ふべからず、
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包むべからず、
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渠は吏務の余暇を以つて、夙に陽明に私淑するところあり、年少気鋭一世を
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睥睨し、天下を下瞰し、古今の豪傑を視ること蠕虫の如く、自ら聖賢の域に
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造謁せむことを期し、早く既に一代の木鐸、道学の柱礎を以つて自ら任せり、
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其の抱負するところや大に、其の期図するところや高し、然り、其の抱負や
此の如く大なり、其の期図や、此の如く高し、渠れ豈に容易に人の下風に立
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つものならむや、渠の眼中には天下豪傑なきなり、豪傑は渠れ一人みなり、
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一世英雄なきなり、英雄は渠れ一人のみなり、聖なく賢なし、聖と賢とは渠
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れ一人のみ、天下亦た之れなし、一世亦た之れなし、其の狷介傲岸なる、豪
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悍桀驚なる渠れが特に其の一代の木鐸と、道学の柱礎とを以て自ら任するに
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於て、躍如として其の眉目を視るが如きを覚ゆ、
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敢為
(かんい)
物事を思い切
って行うこと
儀範
従うべき模範
噐宇
(きう)
心のもちかた
蠕虫
(ぜんちゅう)
体が細長く蠕
動により移動
する虫
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