Я[大塩の乱 資料館]Я
2016.5.16

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「大塩の乱関係論文集」目次


『大塩平八郎』 その46

国府犀東(1873-1950)

(偉人史叢 8)裳華書房  1896

◇禁転載◇

洗心洞の学風(23)
 (其二)洗心洞の教育法(3)

管理人註


規定に関
する法理
的観察

















































道徳法上
の主権者
































洗心洞風
紀振蕭律

          ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 第一條は総則なり、以つて師弟の干繋を規定す、師は行法の権利を有し、子                               ● ● ● ● ● 弟は遵奉の義務を有す、師は命令し、子弟は服従す、是に於いて師弟の名分              ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ は明なり、此の條項は即ち師に与ふるに行法と命令との権を以てするの規定 ○ ○ なり、下文諸條件の大本、是に於て立つ、       ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 第二條は、法律全部違犯者に対する制裁処分を規定す、中途にして、荒業廃 学陥奸細邪淫ものは、洗心洞規約の各條項に、全体的に違犯するものなり、 此の徒や、固より学堂に出づることなきもの、故に預しめ之れが制裁を規定 し置きて、之れか父兄たるものをして之を知らしめ、以つて此の如き罰金科                      ・・・・・・・・・・・・・ 料と、同然の性質を有する制裁を加ふるなり、直接本人に肉体的に苦痛を与 ・・・・・・・・・    ○  ○ ○ ○ ○ ○  ○  ○  ○ ○  ○ ○ ○ ○  ○ ○   ○ ふるを得ざればなり、其の応其家之貧富使某所告之経史以出、焉、            ● ● ● ● と曰ふを見るに、全く罰金科料を課すると、同一の性質を有るす、以下諸條 皆な刑法的制裁処分を規定す、                      ◎ ◎ ◎ ◎ 第三條は稗史小説等雑書の禁を犯かすものは鞭朴若干、肉体的の苦痛を与へ て之を懲治す、                                   第四條は、日課順序顛倒の禁制違犯者に対する制裁処分を規定す、同じく鞭 ◎ ◎ ◎ 朴若干、 第五條は、悪友に交はり、及び放蕩するに就ての、禁制違犯者に対する制裁                      ・・・・・・・・・・・・・ 処分を規定し、其の譴第二條の規定に準拠す、是れ其の違犯行為の性質相似 ・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ たればなり、唯其の違犯行為の時間に長短あるの差別あるのみ、                                  ◎ ◎ 第六條は塾生出入規定と、及び之に対する違犯者処分とを規定す、亦た鞭朴 ◎ ◎ 若干の譴を制裁となす、 第七條及び第八條は、子弟の父兄と、師家との干繋を密接ならしむるを趣意 とす、共に命令のみにして禁制なし、 第九條は、国法上の犯罪者に対する、塾内法律上の規定なり、 ・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・ ・・・・・・・・・ 此の如く平八は法律思想を以つて、塾内の規約を定め、道徳法を基礎として、 ・・・・・・・・・・ 法律的制裁を適用せり、平八は実に洗心洞内命令権の主体なりしなり、而し                   ・・・・・・・・・・・・・・・・ て子弟は即はち之れが客体なりしなり、平八は道徳法上に於ける絶対無限の ・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・ 主権者たりしなり、洗心洞は一つの道徳法上の国家の如とし、而して平八は ・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・ 之れが君主なり、君主は其の司法権を一定の機関に委任することあり、居然 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・ 以上の法律的條項は凡べて平八の委任を受け。之れが代表たる塾生之れを適 ・・・・・・・・・・・・・・・ 用して其の司法権を行使するなり、是れを洗心洞に於ける教育制度の概況と     ○ ○ ○ ○ ● ● ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ● ● ○ ○   ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ なす、洗心洞の風紀は此の法律を以つて維持され、振蕭されたるなり、而し て平八が司法官として吏務を処理するに於いて、周官大司馬の法に則とり、                               ○ ○ ○ ○ ○ 穣苴孫武が寵臣を斬り、愛姫を斬るの筆法を学びたるに睹なば、其の塾内法 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○   ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 律の執行に於ても亦た、厳明仮借するところなかりしを想像するに於いて余 ○ ○ ○ ○ ○         ● ● りあるべし、而して洗心洞の風紀が此の法律を以つて振蕭されたるものとせ      ● ● ● ● ● ● ● ● ば、之を洗心洞風紀振蕭律と名くるも亦た不可あるなかるべし、

睹(み)な











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