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天保六乙未の歳四月、平八は書肆の需に応して、竟に其の著すところの洗心
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洞剳記を世に公にせり、而して剳記や平八畢世の心血を瀝きしところとせば、
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是れ直ちに平八の精神気格の真を描ける小照なり、則はち剳記の公にせられ
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たるは、是れ山陽が喚むで小陽明となせる平八、其の人の肖像を公にしたる
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もの、切言せば、平八其の人は今や社会に発表されたるなり、
甲申三月十二日。聞頼山陽自京都来吾郷寓某氏賦之
大塩後素
春暁城中春睡多。遶檐燕雀声虚哢。非上高楼撞鐘巨。
桑楡日暮猶昏夢。
隣舎花衰。賦之。紅紛倣吾色者。宜監。
隔墻春樹雪花堆。一夜風吹色頓頽。不独主人下籐箔。
游蜂戯蝶去無来。
丙戍仲秋、訪上田翁応其需書孟子之語題絶句于余幅
天理元明月。人欲自浮雲。浮雲碍明月。世路暗紛々。
大塩後素
江秋景
江上優游心未閨B残鐘又向市門還。何当独為釣魚子。
一葉寄那蘆荻間。
奉謝平江大兄見恵魚
簿書叢裏久沈淪。未向呉江垂釣綸。君已臥雲還宿水。
分吾昨夜網中鱗。
梧桐
暗生明情道不開。久将墳典委塵灰。梧桐空結如鈴実。
風鳥弗来誰食哉。
雨中集友人宅読書。
主客相忘此館中。共譚周易豁襟胸。無端坐玩一時象。
雨裏怪松如躍龍。
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石崎東国
『大塩平八郎伝』
その34
大塩中斎
「詩 集」
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