Я[大塩の乱 資料館]Я
2016.7.24

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「大塩の乱関係論文集」目次


『大塩平八郎』 その80

国府犀東(1873-1950)

(偉人史叢 8)裳華書房  1896

◇禁転載◇

救民の幟影(1)

管理人註















































惨状坐視
するに忍
びずなり
ぬ

     惨状坐視するに忍びずなりぬ○蔵書を鬻いて窮民の急を救ふ○同志を団   結す○陰謀泄る○挙兵の議決す○厳正剛直の士独り同せず○羽檄を摂河   泉播に飛ばす○獅子遂に奮進す○富豪の家宅を焼く○救民の幟影は消失   せぬ   ◎ ◎ ◎  ◎ ◎ ◎  ◎ ◎ ◎ ◎  ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎  ◎ ◎ ◎ ◎ ◎   ◎  ◎ ◎  ◎ ◎  英傑当事固忘禍福生死而事適成則亦或惑禍福生死矣。至精熟   ◎ ◎  ◎ ◎ ◎  君子則一也。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・ 志士仁人は身を殺して仁を成す、禍福を問はず、生死を論せず、仁の為めに ・・ ・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・ 殉し、仁の為めに死す、成敗利鈍は逆しめ睹る所に非らず、事成れば王に帰 ・ ・・・・・・・・・ ・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・ ・ し、成らすむは自ら坐す、天下は危急なり、王と民とは共に窮に陥り、塗 ・・・・・ ・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・ ・・・ 炭に苦しむ、利害得失を顧むるの遑なく、鼎刀鋸を慮るの暇なし、我は但 ・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・ ・・ た仁の為めに殉せむのみ、仁の為めに死せむのみ、詭激と評するもの、我其 ・・・・・・ ・・・・・・・・ ・・・・・・・・ ・・・・・・・・・ 評に一任せむ、兇暴と筆するもの、我其の筆に一任す、大逆と曰ふも我関せ ・ ・・・・・・・・・・ ・・・・・・・ ・・・・・・・・ ・・・・ ず、無道と曰ふも我知らず、天に倚るの一釼、空に横はるの一弩、之を抜い ・ ○ ○ ○ ○   ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○   ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○   ○ ○ ○ ○ ○ ○ て紫電一爛、俗官の頭脳を裂かむのみ、之を放つて鷙羽摯掀、懦夫の心腑を ○ ○ ○ ○ ○   ○ ○ ○ ○ ○   ○ ○ ○ ○ ○   ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 貫かむのみ、狂に非らず、乱に非らず、我は竟に手を袖にして黙々傍観する ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○   ○ ○ ○ ○ ○   ○ ○ ○ ○ ○   ○ ○ ○ ○ に忍びざるなり、抜かむかな、放たむかな、竟に発す、 天保の大恐慌は、今や其の極度に達せり、米穀愈乏しくして糶価愈騰貴し、 而して大坂の倉稟は依然として開かれず、悪疫は猖獗にして窮民死に瀕す、 而して浪華の財嚢は居然として鎖ざゝる、八丁酉の歳正月下旬よりは、惨は                           ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 益惨となり、酸鼻の光景、今は目も当てられずなりぬ、平八は最早や見るに ○ ○ ○ ○ ○ ○ 忍びずなりぬ、                     ○ ○ ○ ○ ○   ○ ○   新衣着得祝新年。羹餅味濃易下咽。忽思城中多菜色。    ○ ○ ○ ○ ○   ○ ○   一身温飽愧于天。    ○ ○ ○ ○ ○  ○ ○    ○ ○ ○ ○  ○  ○ ○   一身温飽愧于天。隠者寧無救全。在郷隣生飜□笑。   黙聴大学卒章篇。 朝陽は瞳々として五雲は抜く、唱は々として天地春なり、新に裁したる 春服の翩々たるを着け、屠蘇の杯を挙げて、延寿の酒を傾け、雑煮の椀を捧                           ・・ ・・・・・ けて、加齢の餅を喫す、方さに是れ天保八酉の元正なり、嗚呼、五穀は登ら ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ずして、餓路に横り、塗に顛す、の六龍班鷺列畏れ多くも菜色に ・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・ こそおはすなれ、如何にして彼の民を塗炭に救はむかな、如何にして我が ・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・ 大君の御崎嶇を助け奉らむかな、一念こゝに至れば、手に把る屠蘇も飲み得 ・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・  ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ざるなり、口に哺む雑煮も喰ひ得ざるなり、平八当年の心衷思ひ遣られて、 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○   ○ ○ ○ 同情の涙一掬二掬、血滴々、























睹(み)る







遑(いとま)


詭激
(きげき)
言動が異常に
過激なこと






摯掀
(しきん)






糶価
(ちょうか)












石崎東国
『大塩平八郎伝』
その63










(あくあく)
にわとりの
鳴き声

翩々
(へんぺん)
きらめくさま

崎嶇
(きく)
険しいこと


『大塩平八郎』目次/その79/その81

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