不二峰頭
の平八
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而して其の芙嶽に登るや、平八は芙峰一万八千尺高々たる彼の絶嶽に立つて
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霊曜の杲々として雲を排し、霧を披らき、直ちに東天に燭して下界を照臨す
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るを瞻、天空ふして海濶く、八紘寥廊として乾坤虚明、山は皆な蟻垤と蜂
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との如きを瞰し、当年果して如何の感かある、
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口吐太虚容世界。太虚入口又成心。心与太虚本一物。
人能存道只今乎。
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千年雪映千年月。況復紅輪未暁昇。下界祇今猶夢寐。
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枕頭暗々五更灯。
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雲の上に立つて、日に鞭ち、星に撻ち、空に駕し、天に跨つて縲緲として
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風に吹かれ、四字の外、八極の表に神游する平八は、早やく太虚即ち平八、
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平八即ち太虚となれり、王陽明か
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険夷本不滞胸中。何如浮雲蔽大空。夜静海濤三万里。
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月明飛錫下天風。
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と吟せるもの、平八や其の境に仰俯し、流眄し、兀立し、箕踞す、彼れは日
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星を挟むて、今や天風に駕して飛はむとするなり、
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然り而して天下の凶歉は歳の終るに臨むて、益其の度を進むるなり、秋より
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冬、一歩は一歩より、逼り、一日は一日より急なり、
弟子省語詩。又恐枯淡流乎二氏。故寓警発之意。
大塩後素
看了心中月。意味自深長。不妨洞庭去。縦横撥月光。
雨後郊行。視黄梁黒黍。多為潦水所腐朽。憫然賦絶句。
今秋多雨似黄梅。適遇新晴尋野来。田面水深何所有。
蘋花蒲剣戦風開。
蘋花蒲剣戦風開。可識依然租税催。蛩虫鳴草声尤切。
似訴農人荒耗哀。
朧月野外口号
橋柳生糸岸梅蕾。回陽未解我心憂。帝城遥在雪山下。
貧務衣食富裘。
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杲々
(こうこう)
明るいさま
瞻(み)
濶(ひろ)く
蟻垤
(ぎてつ)
ありづか
石崎東国
『大塩平八郎伝』
その59
撻(むちう)ち
縲緲
(るいびょう)
流眄
(りゅうべん)
流し目で見る
こと
兀立
(こつりつ)
とびぬけて高く
そびえること
箕踞
(ききょ)
両足を前へ投げ
出して座ること
逼(せま)り
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