陽明の理想的国家○陽明平等の観念○平等の天分と平等の権利○平八の
理想的国家は陽明と其の帰を同ふす○平八の真面目○破壊的手段○迹共
産主義者に似たり○平八を吊ふに爆裂薬を以てせよ
知行合一を説ける平八は、学術と事功と、聖賢と豪傑との、二種の観念を合
一にすること、其の畢生の目的としたるが如とし、故に其の信する所は直に
之を実行して勇往邁進亦た顧慮するところあるなし、平八は一つの実行者た
りしなり、
平八が学術に於いて、太虚を理想とするが如く、事功に於ても亦た、国家社
会の組織に於いて、一つの理想を有したるが如とし、其の現実の社会を以つ
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て、円満なる社会と見做さず、原始淳 時代に於ける社会を以つて、尤も学
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術上の理想なる太虚に近きものとなし、平八の脳中には、夙に一つのユート
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ピアは描かれたるなり、
平八が祖述せる王陽明其の人も、夙に抜本塞源論に於いて、其のユートピア
をは構成し、現実の社会を改造して、此の理想的国家に格らしめむことを以
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つて、其の志望とはなせり、而して陽明は進むて此の理想国家に現実社会を
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一歩たりとも近接せしめむと試み、彼の如く尽瘁し 精して、竟に此の志望
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の為めに逆境に死せり、平八亦た箇の志望を有す、故に平八も亦た現実社会
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を改造して、彼のユートピアを現実に構成せむとは願へり、今其の抜本塞源
論に於ける陽明の理想的国家の如何なるものなるやを、こゝに示さむ、社会
主義的の観念、特に躍々として紙表に溢るるを覚ゆ、
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