Я[大塩の乱 資料館]Я
2012.5.10

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「大塩の乱関係論文集」目次


「廖柴舟と大塩後素」
その13
町田柳塘(町田源太郎)

『上杉謙信』得能文著 (偉人史叢 第19巻) 裳華書房 1898 所収

◇禁転載◇

 管理人註
   

其の言に曰く、  苦饑数日、昨買得米一石余斗、計之可一月糧、心中便津々然、  謂可一月無慮、正好作文字消遺、但苦題目可倣、因念僕  得此閑暇、皆頼貧中之力、不然使僕得富貴、米糧固無  慮、然便有許多富貴事叢集、即応対賓客暇矣、雖題目、  尚得文字乎、然僕雖貧、文字頗富、人言窮忙、正坐文  字耳、今守銭奴多不字、焉知貧、正不彼易此耳、 柴舟の窮迫、此に至りて、猶中に楽む所あり、邑令某周歳之を済ふも、 終に一詩を与へざるが如き、以て其気象を想ふべし、 大塩は曰く、  吾既辞職而甘隠、脱険而就安、宜高臥舎労苦以楽自性、然夙  興夜寝、研経藉、授生徒者何也、此不是好事、不是糊口、不  為詩文、不博識、又不大求声誉、不再用於世、只  扮得学而不厭、誨人不倦之陳迹而已、 其語意を察するに、身は隠退、迹を屏くと雖も、心は猶子弟を教育して、 国家の実用を為すに在り、柴舟の如く山野の棄材となりて、世を終るもの にあらず、但当時の形勢、閥閲を以て要路に置き、尊卑の懸隔甚しく、人 材登庸の路未だ開けず、大塩、有用の才あるも、徒らに有司の嫌忌を招き、 殊に鳩毒視せる、姚江の学を奉じたるを以て、之を国家に施すの機会到底 得べからず、然れば、彼が言へる如く、専ら子弟の薫陶に力を尽し、望を 身後に繋くるを以て計の最も得たるものとす、只目前の窮を黙視する に忍びずして、百年の大計を忘れ、天下の笑を貽す、所謂婦人の仁と 匹夫の勇のみ、其学ぶ所に負くの詆は、終に辞すべからざるなり、 宋儒の睡余を舐りて、理義の研鑽に精を耗し、知りて行はざるの腐儒輩、 固り取るに足らずと雖も、大塩の如く、心に得る所、必ず之を行はんと欲 して、時勢を顧みず、身分を忘れ、之を行ふて学ぶ所に負く、亦君子の道 にあらざるなり、されども柴舟の如く、山野の棄材となりて、徒らに文酒 に耽り、自ら束せざるもの、亦不可なり、用舎勢に任せ、巻舒、時に 随ひ、天を怨みず、人を尤めず、進退出処、行雲流水の無心に似たる を以て、君子身を処するの道と為す


























『洗心洞箚記』
その44 


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