Я[大塩の乱 資料館]Я
2012.5.1

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「大塩の乱関係論文集」目次


「廖柴舟と大塩後素」
その4
町田柳塘(町田源太郎)

『上杉謙信』得能文著 (偉人史叢 第19巻) 裳華書房 1898 所収

◇禁転載◇

 管理人註
   

大塩死して二十年ならざるに端なく尊攘の議起りて、天下の志士幕府に 反抗し、終に維新の大業を成就す、是幕府、天下の勇智聡明を抑蔽する の術、清朝に及ばざるがため乎、将神州の正気磅として彼国に卓越す るものあるがため乎、蓋し多年抑塞鬱積せるもの、一時に発舒せしに由 れり、顧みて彼国を観れば、施す所の術、我より巧にして、元気全く消 耗し、復発舒するの勢無し、大塩、其の剳記に記して曰く『明亡以来、 舶来易経、註釈之叙次、大率朱子本義先程子伝、程子伝後朱子本義是即師弟逆坐、父子倒行者也、吁、清人貴敷而不理之情、可見 矣、敷之弊乃至於遺棄君父而不其難、貴理則君臣之恩 不与解於心、是以不遺棄而不非類之腐敗者必出焉、 故他貴敷而不理不亦宜乎、』と、又曰く『清朝之学者多不 良知、非他、是阿上之所悪而已矣、上之所悪亦非他、良知即 孝弟而已矣、士人如真尽孝弟之心則其害乎已、有言 者、悪之以此也、吁、非勢乎、』と清朝儒者の弊実を摘抉して眼孔 矩の如し、清の康熙乾隆の二帝、詩書を以て天下を治め、文物制度の 粲然たる、人の知る所なり、然れども是れ皮相を粧ふの詐術にして、 其実柴舟の所謂天下を愚にするものと、大塩の所謂理を貴ばずして敷 を貴び孝弟を憎むものなり、柴舟其初に於て之を警醒し、大塩其国に居 らずして之を摘抉す、一雙の卓見と謂ふべし、抑も大塩の此に論及せる、 亦徳川氏、程朱の学を以て士人を薫陶し、其聡明を蔽ふの狡計を看破し て、之に激せるなり、其清朝を仮りて、当時を議せるは猶柴舟の明太 祖を仮りて清朝の制義を議せるが如し












『洗心洞箚記』
その220


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