Я[大塩の乱 資料館]Я
2011.3.30

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大塩の乱関係論文集目次


『大阪府誌 警察史』

その20

大阪府 1903 より


◇禁転載◇

  第四節 法度。  慶長以降、諸国大名の当所に蔵屋敷を設けし以来、当所は全国商業の中 心となり、商人は実に驚くべき富力を有し、遠近の侯伯にして、国費融通 の資を此に仰ぐもの、極めて多く、且、幕府また金力の集合地と認め、御 用金を賦課せしこと数回にして足らず、故に幕政の当所に密接の関係を有                   しょうこ せしは、他国の比にあらざりしと共に、商估の種類また千差万別にして、 市政の如き、其の繁雑なりしこと論を俟たず、随ひて、武家諸士をはじめ、 商人の訴訟、その他の民刑事件の起るもの、続ゝ相踵ぎ、幕府の法令、奉                     きはん 行の訓令等を以つて、是等及び一般町民の覊絆を設けられしもの、数ふる いとま に遑あらず、然るに徳川の末年に至るまで、其の大体に至りては、家康の 遺したる、世の謂はゆる百箇條の趣旨を標準とし、之れを補足修正せしに                           ただ 過ぎず。今本文を草するに当り、其の全体を網羅するは、啻に蛇足の憾な き能はざるのみならず、徒に紙数の嵩むを以つて、爰には、特に、其の大 阪に関する主脹なる者のみを抄録して、当時に於ける警察制度の一斑を窺 ふに供せんとす。  武家法度の設けられし嚆矢は、元和元年七月にして、爾来、幕府の嗣職 宣下毎に、大小名を登城せしめて、法令を下すを定規とせられき。二代将 軍秀忠の諸国武家に下しゝもの、総ぺて十三箇條にして、中に就き、司法 に関するもの、亦尠からず。即、諸法度に達背する者、自国の密事を他国                         ねいび に漏らす者、若くは、他国の密事を自国に告ぐる等の侫媚者は、各、その 国に交置すべからずと。 隆りて寛永十二年に至りて、刑罰を行ふに当りては、総べて使の指揮に 任じ、当路者の外、之れに関係すべからず。陪臣、質人、及び所献の者を 追放、若くは死刑に処するに方りては、奉行所に達し、其の指揮を受け止 むことなき場合に於いて、之れを施行せしときは、其の仔細を言上すべし、 又、耶蘇基督教の厳禁、不孝者の処分等をはじめ、其の他各国に於ける法 度は、総べて、江戸に設けられし諸法度を標準として、遵行すべきこと等 の令あり。 夫れより宝永七年四月に至りては、直に令していはく、百姓の訴論は、領 主、之れを裁断し、事のもし他領に跨るときは、両地の領主相通じ、或ひ は支配人の頭人、相会して議定し、若、なほ一決せざるときは、評定所に 就きて裁決すべしと。爾来、屡、発令せられきと雖、みな先規を襲用し、 又新たに設けられしも、其の大綱に至りては、大同小異なるを以つて、茲 に之れを贅せず。


『大阪府誌 警察史』目次/その19/その21

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