大阪府 1903 より
諸士法度の標目に於いては、各異あり、或ひは雑事條目とし、或ひは旗 下法度とし、或ひは諸士法度とすす。然れども、要するに、壱万石以下、 き か 麾下の士に関する法度にして、其の大綱に至りては、武家の諸法度と同じ く、唯その格によりて名称を異にせしのみ。 今、法度中の大要を摘記すれば、寛永九年に於いては、死罪に行はるゝ者 ある時、及び喧嘩火災等に関し、関係者の外は、決して立寄るべからず。 但、災者にして親類縁者なるときは、此の限にあらず。 へんぱ 物頭、諸奉行人等は、殊に偏頗の処置あるべからず。諸奉行人、代官等は、 自分所用の外、物品を買置き、若くは商売をなすべからずと令し、尋いで 同十二年に於いては、諸家中に大犯人ある時は、縦令親類直参の輩なりと も、之れを取持、相拘はるべからず。 徒党を結び、或ひは諸事を妨害し、或ひは落書、張紙、博奕等の不行儀、 其の他、武士にあるまじき所為をなすべからず。 毎月在牢の人数高を書上げ、差出だすべし、若六箇月以上吟味を遂げざる 者あるときは、其の掛官の姓名を認め、七箇月目に差出たすべし。 遠島者にして、牢内に拾人を嵩めば、其の都度、これを出船せしむべきは、 従来の規程なりと雖、若七箇月以上を過ぐるときは、其の人員の多少に拘 はらず、出船せしむべし。 へんしゅ 脚夫の公状贋手紙を以つて受信者を瞞着し、飛脚賃銭を騙取するものあり、 ぼうあつ 之れを防遏せんがため、以来、公状受信者は、直接飛脚に其の賃金を払ふ ことを止め、其の宿に到りて、之れを仕払ふべし、若、受信の際、果して 贋手紙たること判明せば、其の脚夫を留置し、其の筋へ訴へ出づべし。 やや 又、博奕、賭勝負等の厳禁せられたるにも拘はらず、匪徒、動もすれば、 之れを破り、町人中に於いても、亦、隠然行はるゝに至りしを以つて、此 の警令を下しゝこと、亦頻々なり。然るに、近来なほ、一統、之れを犯せ り、若、是等取締上に於いて、匪徒の手向等をなす者あるときは、討捨に し、又、逃去する者ありて、捕縛せられし者は、重刑に処すべしと達せり。