大阪府 1903 より
以下更に少しく、糺問法、護送路等を説かん。 牢問。 まづ牢屋敷の穿鑿所の砂利の上に筵を敷き、囚人は、手鎖の上、牢屋相 役同心差添へ、下人に引連れられ来たりて、之れを行はる。然れども、又、 身分に依りては、畳の上に座せしめ、相投同心二人、左右より之れを挟み、 囚人の責メ台に登れば、相役は椽側に座す。吟味の主任は、与力にして、 其の初、囚人に再三其の利害得失を諭し、口問、又は、問書を読み聞かせ、 なほ白状せずば、下男をして囚人の手鎖を外さしめ、相役は苧縄にて後手 に縛り、尚、白状せずば、更に箒尻にて両肩を敲く。(左右の手首を両肩 の下迄〆揚げて、両肩を敲く。是れ両肩は、肉集まり、骨に当ることなく して、害せざるを以つてなり)。其の剛情なる者に及びては、薪六七本を 並べ、後手に縛り、両膝を捲くりて、其の上に座せしめ、一旦、之れを薪 上より下して、利害を諭し、又は縛り、敲き等をなし、更に進みては、二 たび薪上に座せしめ、縛り縄の余にて、之れを後方の柱に縛し.膝上に石 数枚を載せ、漸次之れを増加して、七八枚、乃至十枚を重ぬ。之れを算盤 あぐら 責といふ。夫れより海老と称する仕方、即、胡床をなさしめ、両足首を一 つに結び、右足首より頸へ縄を懸け、前面へ漸々〆寄す。(但、此の海老 は各牢屋敷へ備へ付られたれども、之れを用ふること甚稀なりき)。 以上を牢問と称す。而して白状せしときは、縄を解き、医師をして診断せ しめ、投薬を要するものは、之れと給し、其の座にて白状書へ爪印を取り、 釣台に乗せ、牢屋敷へ帰りて、相当の刑を執行す。之れに用ふる苧縄の太 サは、廻リ一寸五分、長サ四尋半にして、箒尻の太さは、回り三寸、長サ 一尺九寸計とす。 囚人の、牢問に於いてなほ白状せざる時は、奉行所へ伺のうへ、更に拷 問に附す。