Я[大塩の乱 資料館]Я
2011.5.5

玄関へ

大塩の乱関係論文集目次


『大阪府誌 警察史』

その51

大阪府 1903 より


◇禁転載◇

拷問。  拷問も亦、都べて牢問に於けるが如く、囚人を穿鑿所に召し連れて、拷 問に処すベさを告げ、之を行ふに先だちて、利害を諭し、夫れより、掛リ 役人立会のうへ、手鎖のまゝ囚人を導きて、一同拷問蔵と称する場所に到        た カ り、囚人に二れび利害を諭しゝのち、手鎖を外し、後ろ手に傅り、下男を して拷問台に釣り揚げしむ。之れに附せらるべきものは、人殺、放火、盗 賊、関所破、謀書謀判等にして、是等犯罪の証拠十分なりとも、自白せざ るもの、及び同類者の白状後も、当人のいまだ白状せざる者、又、詮議中 犯罪の証拠分明し、其の刑死罪に相当する者等にして、其の他、拷問に附 すべき者ある時は、奉行中相談のうへ決行し、軽き犯罪者の白状せざる者 には、決して之れを加ふるを許されざりき。  又、廻り方、捕力、其の他、町方より召連れ訴出でたる類は、吟味方の 当番に於いて、之れを白洲に差出だし、入牢、溜預、手鎖預等となして、 之れを吟味方に渡す。而して変死人、口論上にて疵付けられたる者、乱暴 に仍りて打壊せられし類は、双方の役所より使として年寄同心見分し、 其の地に於いて一件口書を取調べ、御番所へ召連れ、当番より白洲へ差出                              まさに だし、吟味方へ渡す。然れども疵人にして疵所の平癒せざるか、将、屈伸 等に自由を失するものなるかを、十分此れに注意し、養生中は吟味に取り 掛らざるものとす。 逆罪等の大切なる囚人を江戸に護送するには、老中の証文あり。而して本 書は、多く代官所等に備へ置かるゝか、又は時宜に仍り、箱に入れ、更に 包みて、護送役人の襟に掛け、其の写を示して宿駅を通行するを例とし、 武士ならば、駕籠乗物に入れ、錠を卸し、青網を以つて下方より上方に廻 はして、之れを留め、普通囚人は、羽掻縛とし、又、身分に仍りて、等差           めかご あり。百姓町人は、目籠に入れ、その高さ三尺にして、之れを琉球筵にて        ご きあな 包み、前面に御器穴と称し、椀一箇を入るべき孔を明け、下の台は、堅牢 なる板を以つて張り、大小便の落穴を設け、内に一本の柱を立て、囚人を          おもがい 繋ぎ、手鎖を掛け、覊を打ち、管(細き竹にて、口の広サより少しく長く             くく              噛 カ 作り、苧縄を通じて口中に銜ませ、後にて結ぶ。是れ即舌を嘲まざらしめ んが為なり)を銜ませ、食事に際しては、護送の役人をして、之れに注意 せしむ。  又、重罪人にして、病死せしときは、之れを塩詰として、護送せしが、                               わらづと 其の塩詰法は、夏秋の季に於いては、稲葉、春冬の季に於いては、藁苞を 以つて之れに塩を入れ、死人の鼻孔、両耳、口、臍、肛門等へ差込み、両 脇へ塩を詰め、又、塩を厚く置きて、其の上に死人を置き、更に上より、 また塩を詰む。而して、古塩は血の交るを以つて、新塩を用ひしが、此の 法と以つてすれば、幾日を経過すとも、腐敗するの憂なし。 又、遠方へ送る獄門首の如きも、亦腐敗の憂あるを以つて、少許の稲葉、 又は藁苞に塩を入れて、深く切口に於ける孔中に挿入し、外部の鼻孔、口、 耳、等にも亦これと同じくす。(切口に於ける孔は、頭中に通して大なる もの一と、他に其の前方に当りて、二筋の小なるものとあり。然れども其 の所在、弁じ難きに至るを以つて、努めて之れを見出だし、柳枝を細末に 削りて探り入れ、後、以上の法を行ふものとす。)  又、重科人の死骸にして、塩詰のうへ仕置せらるゝのは、従来、主殺、 親殺、関所破、重謀計者に限られしを、享保六年に於いて、関所破と重謀 計者とは、其の軽重によりて、或ひは塩詰に及ばずと改定せられき。


『塩逆述』巻之九 その7−1


『大阪府誌 警察史』目次/その50/その52

大塩の乱関係論文集目次

玄関へ